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2008年2月

2008年2月29日 (金)

今月?のベスト&リスト(2007年12月~2008年2月)

 年をまたいで、ようやくリスト化するくらいの数まで感想がたまった。ということで、2007年12月から2008年2月までに感想を書いた14の本の中からベストを。

◆ベスト 【フィクション】   「リアル 7巻」 井上雄彦

リアル 7 (7) (ヤングジャンプコミックス) Book リアル 7 (7) (ヤングジャンプコミックス)

著者:井上 雄彦
販売元:集英社
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 これを読むと、「SLAM DUNK」はファンタジーだったなと思えるくらいに、リアルな若者のあがきが見える。障害を持つ持たないに関わらず、苦しみながら成長する彼らに、果たしてどんな未来が待っているのか。引き続き目が離せない。

◆ベスト 【フィクション以外】   「寺と墓の秘密 誰も知らない巨大ビジネス」週刊ダイヤモンド1月12日号

 日本の仏教はいい加減だなあということをつくづく実感させられた記事。そのいい加減さが日本人の気質に合ってるんだろうけど、そんないい加減なものでがめつく金稼ぎされてもなあ、と釈然としない。

 上記の作品も含めた、2007年12月、2008年1、2月の感想リストは以下の通り。

「人間モード」はオンで―「GANTZ 22巻」

あえて「救い」のない展開にすることの意味は―「模倣犯 1~5巻」

一刻も早く治さなければならない、という重圧―「薬でうつは治るのか?」

戦いは終わらない―「麻雀放浪記 1巻」

プロ野球罰シリーズ開催希望―「団地ともお 11巻」

成立はしてるけど、傑作の幕引きとしては寂しい―「皇国の守護者 5巻」

もう誰も解脱しない―「寺と墓の秘密 誰も知らない巨大ビジネス」週刊ダイヤモンド1月12日号

井上雄彦の「覚悟」が見える―「リアル 7巻」

美しき麻雀破滅旅情―「麻雀放浪記 2巻」

いよっ、村上屋~!―「JIN 10巻」

再起不能フラグか?―「風の大地 45巻」

日本のハードボイルドはこうじゃなきゃ―「愚か者死すべし」

熟成されたワインに似て―「もやしもん 6巻」

夏目さんは「ウダウダ」を否定しない―「彼岸過迄」

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2008年2月28日 (木)

夏目さんは「ウダウダ」を否定しない―「彼岸過迄」

 今年度のセンター試験の国語で出題された作品。問題に抜粋された部分を読んで、あまりに面白かったので一冊まるごと読んでみた。

Book 彼岸過迄

著者:夏目 漱石
販売元:新潮社
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 この作品の主人公格は、二人の高等遊民であるといって差支えないだろう。高等遊民は、教育があるのに正業に就かずブラブラしている。連想するのは現代のニートだ。高等遊民には暮らしにあまり困らない良家の子女が多く、ニートとは厳密には異なるが、読んでみてやっぱり重なる部分が多い。

「君、教育は一種の権利かと思っていたら全く一種の束縛だね。いくら学校を卒業したって食うに困るようじゃ何の権利かこれ有らんやだ。それじゃ位地はどうでも可(い)いから思う存分勝手な真似をして構わないかというと、矢っ張り構うからね。厭に人を束縛するよ教育が」

 これは高等遊民のうちのひとり、須永の言葉だが、いまどきの大卒ニートが言っても何の違和感もない。就職コンサルタントとかに「ウダウダ言ってんじゃねー」と言われそうだ(コンサルタントはそうは言わないか(笑))。

 自分の就職の世話をしてくれるかもしれない人に会っても、親や友人と話してても、果ては若い女性の前でも、いつも「ウダウダ」(笑)。とにかく、この、現代にも普通に通用する「ウダウダ」感が読んでいてたまらんのです。

 なぜかというと、この「ウダウダ」の背後にあって常に揺らいでいる微妙な心の綾を、夏目さんは実に丹念にわかりやすく書いてくれているから。自分が「ウダウダ」と悩み行動できなかったときに、うまく言い表せなかった気持ちを、見事にすくい取ってくれている感じ。あーそうそうそういう感じと、かゆいところを掻いてもらった嬉しさがある。しかもその掻き方が優しいんだ。「ウダウダ」を決して否定していない

 いま、勉強や仕事や恋やその他もろもろに「ウダウダ」してる人は、読んでおいて絶対に損はないと思う。自分の気持ちの揺らぎ方を少し上手に見つめられるようになる。いつの時代も同じように戸惑っている人がいることがわかる。そして、そういう人を見つめる優しい目線があることがわかる。

 私も、今よりもっと「ウダウダ」していた過去の自分を、ちょっと優しく肯定してやることができました。

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2008年2月27日 (水)

熟成されたワインに似て―「もやしもん 6巻」

 菌もウンチクもボリューム満点、異色の農大マンガの6巻。って言っても、この巻は大学の描写はほぼ皆無で、逃げる女を男たちが追う(笑)、にぎやか・つややかなフランス編だ。

もやしもん 6―TALES OF AGRICULTURE (6) (イブニングKC) もやしもん 6―TALES OF AGRICULTURE (6) (イブニングKC)

著者:石川 雅之
販売元:講談社
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 今までのエピソードでも感じてたことではあったが、この作者、緻密にストーリーを構成するのが大好きなんだね。ウンチク話と並んで、これは作者の性分なんでしょう。

 このフランス編は、後輩男三人組が長谷川先輩の結婚を阻止できるか、というのがメイン部分なわけだ。せっかちな読者なら、このメインだけ早く解決させて、とっとと日本に戻って来いと言うだろう(笑)。でもこの作者は、そこにありったけの材料を詰め込めるだけ詰め込む

 ・フランスワイン農園の父娘の葛藤

 ・長谷川と婚約者との幼少期からの因縁

 ・川浜と長谷川の急接近

 これらは、必須というわけでなかったり、軽めに済ませても構わなかったりするエピソードなんだけど、すべて全力投球で描いてるのだ。だから展開が遅くなる。でもその分、濃密になる。最後の余韻も深くなる。

 メインの筋だけを性急に追うのでなく、手間ひまかけて練り上げられた奥行きのある複雑なストーリー。それはまるで熟成された高級ワインのふくよかな香りにも似る。…と、5年以上寝かせたワインなんか飲んだことのない私が言ってみるのだった(笑)。

 このゆっくりめの展開に賛否両論あるかもしれないけど、私は好きですね。

5巻の感想

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2008年2月26日 (火)

日本のハードボイルドはこうじゃなきゃ―「愚か者死すべし」

 あやうく、「渡辺」が誰かも思い出せないところだった。それが9年ぶりに新作が出るということの意味だろう(<沢崎ふう述懐)。

Book 愚か者死すべし (ハヤカワ文庫 JA ハ 4-7)

著者:原 りょう
販売元:早川書房
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 しかし面白い。久々にこのシリーズを読んで感じたのは、リーダビリティがものすごく高いということ。一節が10ページ程度でまとまっており、そこで常に何かが起きて何かが謎になり、また何かが判明する。次々に新しい刺激が来るので飽きないし、寝る前の短い時間に読書する私のような人間の場合、この食べ切りサイズがありがたい

 で、あまりにそのまんまで申し訳ないが、それにしても沢崎はシブい。冒頭、すべての発端となる伊吹啓子という女性が事務所を訪れているときに電話が鳴る。相手が訊いてくるわけだ。

「そちらにお客さんで、伊吹啓子さんがおみえになっているでしょう?」

「いや、そんなひとはおみえになっていない」

「え? そんなはずはないんだが……番号は間違えていないようだし……」

「ご忠告すると、あなたがいま電話をかけているところは、客に誰がいるかなどということを、電話の向こうの正体不明の男にぺらぺらとしゃべったりはしないのだ」

 また、ヤクザの手の者が沢崎をつかまえて言うわけだ。

「うちの組長があんたに会いたいそうだ。つきあってくれ」

「組長というのは安積武男のことか」

「そうだ」と、男は我慢強い口調で答えた。

「安積武男に伝えてくれ。私に会いたければ、自分のほうから会いにこいと」

 く~、シブい。でもこればっかだと話が進まないので、すぐに気が変わって組長に会いに行くんだけどね。てことは、このやりとりは沢崎のシブさを見せるための演出か?(笑)まあ、ヤクザの威圧に屈しないタフさはこれで十分に伝わってくる。

 そのくせ、銃を目の前にすると体が固まってしまうところがまた等身大でイイんだ(笑)。銃を持たない日本のハードボイルド探偵はこうじゃなきゃいけない。

 ストーリーは、複数の事件が絡み合う接合点にやや偶然のチカラを借りすぎている気がするのと、真相を意外なところに落としたために案外スケールダウンした感があるのがやや難だが、しかしこれらはまったくの些事であって、とにかく最初から最後まで圧倒的な推進力で読めることは間違いない。

 あとは一刻も早い次回作の刊行が望まれる。本書の後記に、著者はこの9年余り、とにかく優れて面白い作品を短時間で書くための執筆方法と執筆能力の獲得に苦心を重ねた、とあった。

本作がより優れて面白い作品になっていることに、読者のご賛同を得られれば、欣快のいたりであり、短時間で書くことができたことは、本作につづく新シリーズの第二作、第三作の早期の刊行をもって証明するつもりです。

 …早く証明してくれ!(笑)

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