アニメ・コミック

2008年4月11日 (金)

男子は決して駆けつけられない―「おやすみプンプン 2巻」

 最後に中学生になってよかった。それが救いでした。小学生編は色々な意味でそろそろ読むのがつらくなってました。

おやすみプンプン 2 (2) (ヤングサンデーコミックス) おやすみプンプン 2 (2) (ヤングサンデーコミックス)

著者:浅野 いにお
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 1巻の感想では、「これが男子小学生のスタンダードだ!」と書きました。
 が、2巻の展開でその印象は修正です。ストーリー全体に占めるシュールな要素のインパクトが強くなり過ぎました。漫画表現がシュールだけでなく、火事だの神様だのといった展開がやや突拍子もない感じで、男子が誰でも自分の経験になぞらえて共感できるようなスタンダード感は薄れた気がします。

 ですが、愛子ちゃんとの夏の約束を守れなかったところは、立派でした。立派にスタンダードでした。ああいう約束は守れないのが立派な男子小学生なのです。
 男子小学生は非力であり無力であり、絶対に愛子ちゃんのもとには駆けつけられないのです。そういうものなのです

 日常を飛び越える勇気を、あの年頃の男の子に求めるのは酷なこと。むしろ女の子同士のほうが軽々と遠くまで飛んで行くことができるでしょう。

 ともかく、このエピソードには強烈なスタンダード感がありました。

 …以上、小中学生のときに小さじ一杯ほどの勇気が振り絞れずに、その後十年近く甘美な後悔にさいなまれた三十路の男がお送りしました(笑)。

※ 1巻の感想

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年4月 1日 (火)

大胆極まりない「数寄者史観」―「へうげもの 1~6服」

 ずっといい評判を聞いていたので、いつかは読もうと思っていた一作。6巻が出たのを機に、そろそろかと手を出してみました。

 結果。この面白さはただ事ではないです。私の中でいま最も続きが読みたいマンガのひとつに躍り出ました。

へうげもの 6服 (6) (モーニングKC) へうげもの 6服 (6) (モーニングKC)

著者:山田 芳裕
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 主人公は、織田信長に仕え、秀吉が天下を取った後はその重臣となった戦国武将・古田左介。この人の造型がとにかく秀逸なのです。

◆ 筋金入りの「数寄者」

 「へうげもの」とは、「ひょうきんもの」の意。「武」に生きるべき戦国の世にあって、茶器だの椀だの飾り箱だのといった「名物」のことが頭の大半を占めているという、「数寄」を愛する変わり者の武将。それが、古田左介なのでした。

 とにかく、戦の中で戦を忘れることランバ・ラルのごとし。というとジオン軍大尉に失礼なくらい、合戦のさなかに「名物」を追い求めます。ひとたび敵の城に攻め入ったなら、敵の兵士には目もくれずに「名物」を探す。素晴らしい「名物」を手に入れるためなら、時には敵将さえ見逃すし、戦利品をちゃっかり懐に入れたりもします。

 こんな部下、持ちたくねえ~(笑)。

 …と、思うのですが、これがどうして本当に憎めないキャラクターで、自分が信長や秀吉だったとしてもおそらく手元に置いておきたかったのではないかと。趣味に走り過ぎてしまうところがあるとはいえ、根は純粋ですし、「数寄」にかける情熱が戦や政で役立つこともあるので、上司からすれば異能の部下として重宝するんじゃないかと思います。
 おまけに、たまに名物をあげときゃ忠誠度が猛アップしますからね。好みに合わないとがっかりされますが。まさに光栄のシミュレーションゲーム感覚(笑)。

◆ みんな「数寄者」

 ただ、左介ほどではないとはいえ、戦国武将の多くがこんな価値観の持ち主として描かれています。「名物」をひと目見たい、手に入れたいと、戦の方針を変えたり大金をはたいたりします。信長も、秀吉も。
 まあ天下人や大大名は権力の象徴としてそういった物を求めている感じですが、中には純粋に愛でる対象として欲している人たちもたくさん出てきます。それで命を落とす松永久秀とか、逆に名物を持ってとんずらする荒木村重とか。

 そしてその頂点が、千利休です。武将じゃないけど、このマンガの頂点に君臨する人物は千利休と言って過言ではないでしょう。
 その大物ぶり、黒幕ぶりたるや、私の大金時も青大将なみに縮むといった塩梅(なんのことかわからない人は本作を読もう!)。信長暗殺から光秀を打倒して秀吉の天下統一へと時代が大きく動いた背後には、「美」の統一をたくらむ千利休がいたのであります。

 なんと大胆な歴史解釈。トンデモに聞こえるかもしれませんが、読んでたらその世界観と相まってねじふせられます。
 思えば、交通の便が悪くて文化レベルもそれほど高くなかった時代、「美」は少数で、かつ偏在していたわけです。それらをすべて自らの手中におさめたいと思うのは、ある意味で「強者」の当然の欲求だったのかもしれません。

 美しい物を手に入れたいと思う武将たちが戦い、美しい物とは何かをコントロールしたいと思う千利休が陰で糸を引く。本能寺のような有名なエピソードも、通説に逆らって驚きの展開を見せます。このマンガを読んでいると、なんだか、歴史は「数寄」によって動かされていたかのような気がしてきます。
 司馬遼太郎の作品に見られる特徴的な歴史観を「司馬史観」といいますが、この作品はいわば「数寄者史観」で貫かれているのですね。

◆ 自分も「数寄者」

 で、なんでそんな話を読んでてそれほど面白いのかというと、やっぱり自分も「数寄者」だからなんですよね(笑)。

 この作者、「デカスロン」の頃から知っていますが、単行本は今回初めて買いました。「デカスロン」はヤングサンデーで毎週欠かさず読むくらい面白かったのに、単行本をそろえる気にはなれなかったのです。

 絵がね。左介流にいえば、「どばあ」って感じの絵がどうも生理的にダメだったのです(笑)。

 ところが、この「へうげもの」をちょっとブックオフで立ち読みしたところ、実にイイ感じでアクが取れてて。昔みたいなものすごいデフォルメは抑えられ、人物の表情の豊かさがうまいこと残り、背景はほどよく枯れていて、全体として画面が「美しい」のです。「しゃさぁ」って感じ(と言われても)。
 おまけにストーリーが実に面白い。ブックオフで2巻まで読んで、「どうにもこれは買わねば気が済まぬぞォ古左!」となりました。(実際、「続きを読みたい!」と思わせるように、各巻のヒキにはかなり気を遣っている感じがします)

 そこで私の中の「数寄者」は、普通の書店へと新品を買いに走らせるわけです。しかも、すでに読んだ1、2巻も含めて6巻全部。
 この変なこだわりと蒐集癖。左介の振る舞いに似ている気がしてならないです(笑)。

 ともあれ、本当に面白い「へうげもの」。今、古田左介は古田織部正となって、焼き物のブランドを作る一大プロジェクトに乗り出しています(これを完全に私費でやってるのが男前)。
 平時にはそれもよいでしょう。しかしこの先には、関ヶ原が待っている。再び戦時となったとき、左介はどのように立ち回るのか。実に見物です。

へうげもの 1服 (1) (モーニングKC) Book へうげもの 1服 (1) (モーニングKC)

著者:山田 芳裕
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年3月29日 (土)

うらやま楽しい現代版「まんが道」―「アオイホノオ 1巻」

 1980年代。漫画業界全体が甘くなっていた(?)頃… 

 大阪の芸術系大学に進学して、いつかはマンガ業界で名を上げてやろうと燃えまくっている若者がいた。名は焔燃(ホノオ・モユル)。
 ほとばしるマンガ・アニメ・特撮への情熱と、いつかはデビューできることを疑わない並々ならぬ自信
 でも彼は絵が下手なのだった(笑)。漫画原稿の枠線の引き方さえ実は知らない。果たして彼は漫画家になることができるのか?

アオイホノオ 1 (1) (ヤングサンデーコミックス) アオイホノオ 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)

著者:島本 和彦
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 これは面白いです。実に読んでいて楽しい。
 プラス、主人公のことをうらやましいと思う気持ちが湧いてきます。

 いわば「うらやま楽しい」マンガです。

◆ 80年代を知る

 まず楽しいのは、80年代のアニメやマンガシーンがどういった状況にあったのかが、主人公の目、ということは島本和彦フィルターを通してつぶさに描かれること。
 主人公は裏表紙の学生証によると、昭和36年4月26日生まれ。私とはひとまわりくらい違うってことになります。私が物心ついたときにはすでに一線級であったあだち充、高橋留美子、細野不二彦といった漫画家たちが、雑誌デビューしたての頃にどんな待遇を受け、どんな受け止められ方をしていたのか。その辺りのよく知らなかった事情がわかるのが興味深いです。

 そしてこれらの漫画家に対して、主人公がそれはもうカンペキな「上から目線」で批評をします(笑)。「俺だけは認めてやろう!!」と、若かりしあだち充や高橋留美子に言い放ってほくそえんでるわけですね。いや、もちろん主人公はこうした人たちのマンガが好きで言ってるんですよ。

 なんというか、漫画家への愛が高ぶりまくり、それゆえに独善的な態度に陥ってるわけです(身に覚えがありすぎる(笑))。

 私はそもそも作者の島本和彦のファンですし、あだち充、高橋留美子、細野不二彦も自分の漫画史を振り返って絶対になくてはならない存在です。いわば、好きな人が好きな人のことをほめているという状態。これはうれしいものですよね。

◆ 青年立志もの

 この作品のもうひとつの魅力は、まだ何者でもない若者が、もがいたりあがいたりしながら身を立てようという様を、笑いながらも期待を込めて見守れるというところです。何せ、現実の焔燃(島本和彦)は、今や立派な漫画家です。ということは、この後、デビューへの階段を登り、読み切りの掲載、連載の獲得…と話は進んでいくはずです。

 いわば現代版「まんが道」

 藤子不二雄A「まんが道」は本当に好きな作品なので、またああいった話が読めるかと思うとそれだけでワクワクします。

 しかも今のところ、主人公はマンガのテクニック的にはまだまだのよう。同期の庵野秀明の才能(パラパラ漫画とか最高にうまくてビビります)、先輩(なのかどうかよくわからない)の矢野健太郎の凄さにかなり圧倒されてます。
 ここから、どう将来への道が拓けるのか。

 さらには、天然スレンダーお姉さんと、元気はつらつスポーツ少女との、恋のような恋でないようなウラヤマしい関係もひそかに目が離せないです。愛…しりそめるか?(笑)

◆ 「うらやま楽しい」

 …ということで、このマンガ、全体的に読んでいて楽しいだけでなく、「いいなあ」「羨ましいなあ」という気持ちが湧いてきます。

 これはおそらく、マンガが好きで青春を送った者なら誰もが一度は憧れる「漫画家」への道をひた走っている主人公の姿がまぶしいんですね。
 マンガ好きなら、漫画家になりたいと思う。でも、努力してもきっとなれない。そう思うから「マンガ道」を走らないわけです。漫画家になれるって自分の未来を知ってたら、マンガ好きは100人中100人が「マンガ道」を走りますよ。言い切るなあ。

 ところがこの作品の主人公はそこをわき目もふらずに走ってる。まあ多少悩むこともあるのですが、それも含めて実に楽しそう。恋までついてくる。

 しかも、私たちは、この主人公が最終的に漫画家になれるという「未来」を知っているのです。彼の努力が報われることを。

 それが、このマンガが「うらやま楽しい」ことの源泉でしょう。

愛…しりそめし頃に…―満賀道雄の青春 (1) (Big comics special) Book 愛…しりそめし頃に…―満賀道雄の青春 (1) (Big comics special)

著者:藤子 不二雄A
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年3月20日 (木)

この結末には、きっと泣く―「医龍 16巻」

 この感動を、どう伝えればよいか。手に汗握るストーリーと美しい作画で、いま最高に面白いと断言できる医療マンガの16巻。

医龍 16―Team Medical Dragon (16) (ビッグコミックス) 医龍 16―Team Medical Dragon (16) (ビッグコミックス)

著者:乃木坂 太郎,永井 明
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 今まで幾度となく難手術を奇跡的な腕で成功させてきた天才外科医の朝田だが、今回の緊急手術では輸血用の血液が足りないという絶体絶命の窮地に陥る。そこで、朝田に反発しつつもあこがれてきた研修医の伊集院くんが、嵐の中へと輸血用血液を受け取りに走る!

 可能な限りの手を尽くしつつ彼の帰還を待つスタッフたち。そんな中、人の命を預かる医療現場で研修医のような未熟な医者を「信頼する」ことについて朝田が語る場面がある。

朝田「思い出せよ。(伊集院が)成長したから信じたんじゃない」

  「成長する事を、信じたんだ」  ←ここがまずシビれる

  「俺は、いつまでもここにはいない」 …

  「平凡で未熟な医者に期待することを忘れて―」

  「誰にバトンを渡していくんだ!?」

 アツい上に深い!名シーン。

 いくつもの困難がふりかかり、アクシデントにも見舞われ、やがて絶望的な状況が訪れる。その中で生まれた「人の絆」「信頼」がもたらす結末とはいかなるものか?

 詳しくは書かないけれど、「信じ、努力すること」にまつわる冷徹な現実をこれでもかと突きつけつつ、なおそうした姿勢を肯定できるような得がたい喜びを最後に配するという奇跡のストーリーテリングに、ただただ感動、感涙だった。

 この巻のラスト、伊集院に残された仕事とは何だろうか?やはりあれだろうか?続きが待ち遠しい。

※ 14巻の感想

[MEMO]------------------------------

医者の育成は難題だ

 前に読んだ久坂部羊「大学病院のウラは墓場」でも、2004年12月に発覚した、東京医大病院での心臓手術連続死亡事件について言及があった。この事件では、執刀医の上司にあたる教授が「弁膜症手術の経験を重ねさせてやろうと思った。言葉としては悪いが、トレーニングとして必要だった」と言ってしまって、非難の声を浴びた。

 だが、医者である久坂部氏は率直に言う。

私もこの発言には大いに問題があると思う。ただしそれは、患者をトレーニングの材料にしたからではなく、そのようなほんとうのことを迂闊にしゃべってしまったからである。

 そうした「トレーニング」を積まないと、のちに何人もの命を救えるような医者は育たないのだ。

 こうした人材育成と、医療過誤、医療訴訟、医療政策は複雑に絡みあっていて、とても唯一解を出せるような問題じゃない。ただ、今よりももっと高度な人体シュミレーターを開発して、路上に出る前の所内教習みたいな訓練を、様々なケースでやれるようにはなって欲しい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年3月15日 (土)

分厚いドラマを見たいんだ―「ONE PIECE 49巻」

 その旺盛な発想力にひたすら感心するほかない、海賊冒険ロマンの49巻。50巻の大台は目前だ。

ONE PIECE 巻49 (49) (ジャンプコミックス) ONE PIECE 巻49 (49) (ジャンプコミックス)

著者:尾田 栄一郎
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 怪奇の島、スリラーバーク編が終わりに近づいている。このエピソードは46巻から始まったので、5巻くらいでまとまるということなる。たいへんケッコウなことだと思います。が、エピソードが短けりゃいいってもんでもないような。

 「ONE PIECE」の魅力のひとつは、少年向けバトルマンガという器に大人でも泣けるヒューマンドラマを入れてるところだ。作品の売れ行きからいって、少年マンガ史上で比肩しうる存在は「ドラゴンボール」しかないと思うが、他の要素はさておきドラマ性の高さでは「ONE PIECE」のほうが上だろう。ひとつのエピソードの終盤に大きな感動をもたらすために、序盤では周到に伏線が敷いてあったりする。

 でもそれをやると、どうしても展開が遅くなるんだよね。この作品への批判として「話が長すぎる」とよく言われるが、これはドラマの厚みを少しでも増そうとすることによる弊害といえるだろう。

 ただ、やっぱり分厚いドラマがあってこその「ONE PIECE」だと思うのだ。もしこの要素を減らしたら、そりゃ偉大な先駆者である「ドラゴンボール」に並ぶべくもなかったろうし、「聖闘士星矢」や「魁!男塾」にも勝てなかったろう。

 つまり、このマンガのファンは、長大なドラマにじっくり付きあうしかないってことです。

 この巻を読んでそんなことを思ったのは、モリアが

「仲間なんざ生きてるから失うんだ!」

「全員が始めから死んでいるゾンビならば 何も失う物はねェ!」…

「おれはこの死者の軍団で再び海賊王の座を狙う!」

…と叫ぶ場面。

 これはかなり痛切な叫びですよ?尾田栄一郎なら、きっとこの先、モリアの過去編で4話は使うね(笑)。47巻でモリアは「今のような部下がいれば、新世界でカイドウに敗れることはなかった」と言っているので、その辺りの事情が絡んでの、この叫びだろう。

 スリラーバーク編、次の巻で終わると思ってたけど、これは油断できませんな(笑)

47巻の感想

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年3月11日 (火)

全ぼのファンに告ぐ。「必読」と―「ぼのぼの 30巻」

 基本的にネタバレは極力避けるのがこのブログの方針なんだけど、以下の内容は単行本を手に取って表紙をめくればものの数秒で判明する事柄なのでことさらに隠すことをせず、それよりむしろこの事実を天下に知らしめることで最近「ぼのぼの」から離れていた人にもぜひこの30巻は手に取って買っていただきたいという思いからあえて書きます。

ぼのぼの(30) (バンブー・コミックス) ぼのぼの(30) (バンブー・コミックス)

著者:いがらし みきお
販売元:竹書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 シャチの長老さま、死す。

ぼの「おとうさん 長老さまが死んで悲しくないの?」

おとうさん「みんなね」「生きて行けなくなると」「死ぬんだよ」

     「だからしかた」「ないよ」

 このエピソード自体は単行本の4分の1しか占めていないのでそれほど重たくはなっていないのだけど、おバカなギャグの合間にほんのりとにじみ出す叙情は素晴らしい。何よりも、スカーさんが出てきたり死神ラッコという懐かしい呼び名が登場したりで、昔からのファンとしては、ぐっとくる。

 他にもこの巻では、ヒグマの大将が久々に登場するし、アライグマくんのお父さんの往年の名台詞も飛び出す。

「オレぁな 戦争もきらいなら 平和もきらいなんだよ」

「宗教もきらいだし 愛なんてもっときらいなんだ」

「しかし~ なにが~ 一番きらいかっていうとな」

「ひとの家のそばを走っていくヤツだあーーー」

 今巻の帯でオリラジの中田が、「ぼのぼの」は小学生で出会ってからずっとぼくのほんとうの教科書でした、というような推薦文を付けていた。私も初めて読んだのは中学の時なので、その気持ちはよくわかる。懐かしいキャラやフレーズがいくつも登場したのは、30巻という区切りを迎えて、作者のいがらしみきおが、そうした懐旧の情にひたりたい読者の気持ちをきっと汲んでくれているのだと思う。

 あとは、ボーズくんを久しぶりに見たいなあ。プレイリードックちゃんとかも。これはまた、40巻でのお楽しみかな(笑)。

 あ、そうそう、前巻で旅に出たアライグマくんは無事に帰還しました。これがまた、さりげなく少年の成長物語になってて、実にいい話ではねいでぃすか

※ 29巻の感想

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年3月 6日 (木)

作者死すとも作品死せず―「新ナニワ金融道 復活銭闘開始編」

 もう10年以上前に終了し、作者もすでに亡くなった金融マンガの金字塔。その続編が出ていた。

Book 新ナニワ金融道 復活銭闘開始!!編 (GAコミックス)

著者:青木雄二プロダクション
販売元:グリーンアロー出版社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 オリジナルの「ナニワ金融道」は、非常にエポックメーキングな作品だった。金にまつわる人間の赤裸々な欲望を、法律的な裏付けというか多彩な法の抜け道とともに活写するスタイルは、定規で引いた直線を一切拒否する偏執的ともいうべき猥雑な描き込みとともに、同系のフォロワーをいくつも生むほどにマンガ界にインパクトを残した。

 しかし「ナニワ金融道」は、話としてはいくらでも続きが描けそうな中途半端なところで終わってしまった。この先、主人公はどのように闇金業界をのし上がっていくのかがとても気になったものである。

 そこで今回の復活。まことに大歓迎である。もとの作者の青木雄二は亡くなったが、その遺志を継ぐ(?)青木雄二プロダクションから作品が提供されることになった。絵がちょっとこなれていたり、ギャグがやや小洒落ていたりするという微妙な差異はあるが、オリジナルからの設定のつなぎ方がうまく、昔のファンは変わらず楽しめる。主人公の灰原が逆境からスタートし、上司の桑田が作った新しい会社で新しい仕事を始めるところも、いかにも「新」ナニワ金融道という感じがしてよい。ラストでは、あの懐かしいキャラクターも登場するし。

 そしてなんといっても、作品のテイストがまさしくオリジナルのそれなのだ

 たとえば、借金で首が回らなくなった会社の社長が、営業譲渡という合法な手段を悪用して負債を逃れようとする。債権の回収に来た主人公たちにいけしゃあしゃあと吐くセリフがこれ。

「な なんとか返済の道筋を立てて… 決しておたくを不義理にはしませんから!

 しかしそれが単なるおためごかしなことは百も承知の、桑田のセリフ。

「なに… 法が許すんやったらあらゆる手ぇ使こて生き残る権利が誰にでもありますんや。

おたくもそうなさったらええがな!」

 …法ってそういうもんか?(笑)

 この作品を読んでいると、「法律ってほんと善良な人が作ってるんだなー」と実感する。そういう人は頭はいいんだけど、自分の作った仕組みがいかに現実的に悪用できるかまでは想像がはたらかないんだね。これは頭の良し悪しじゃなくて性格の問題。何か法律を作るときは、その悪用に長けた人たちの意見も参考にしたら?防犯対策のアドバイスを元スリの人たちから聞くみたいに。

 ともあれ、法の「上澄み」でなく、底に「澱」のように溜まった数々の抜け道を、これほど面白く見せてくれるマンガはなかなかない。作者が死んでも同じテイストで作品が出せるなら、中途半端で終わることもないでしょう。今度は最後まで続けるんやで!

「いつだったか 大阪一の金融マンになろうって話したのを… お前覚えとるか?

ここから もいっぺん それを始めようやないか」

[MEMO]------------------------------

*ただ掲載誌が「ケータイ☆まんが王国」という、およそ盤石と思えない媒体なのが不安。大体にして、単行本に巻数が設定されてないからね。「復活銭闘開始編」ってなんだよっていう。この先、何巻も何十巻も出すつもりがあるとは到底思えない。せめて「1巻」と名乗って欲しかったなあ。

*しかし朱美さんはええ女やで。これほどヌードやベッドシーンがそそられないヒロインも珍しいけど(笑)、逆にヒロインであることにこれほど説得力のあるキャラクターもそうはいないと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月29日 (金)

今月?のベスト&リスト(2007年12月~2008年2月)

 年をまたいで、ようやくリスト化するくらいの数まで感想がたまった。ということで、2007年12月から2008年2月までに感想を書いた14の本の中からベストを。

◆ベスト 【フィクション】   「リアル 7巻」 井上雄彦

リアル 7 (7) (ヤングジャンプコミックス) Book リアル 7 (7) (ヤングジャンプコミックス)

著者:井上 雄彦
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 これを読むと、「SLAM DUNK」はファンタジーだったなと思えるくらいに、リアルな若者のあがきが見える。障害を持つ持たないに関わらず、苦しみながら成長する彼らに、果たしてどんな未来が待っているのか。引き続き目が離せない。

◆ベスト 【フィクション以外】   「寺と墓の秘密 誰も知らない巨大ビジネス」週刊ダイヤモンド1月12日号

 日本の仏教はいい加減だなあということをつくづく実感させられた記事。そのいい加減さが日本人の気質に合ってるんだろうけど、そんないい加減なものでがめつく金稼ぎされてもなあ、と釈然としない。

 上記の作品も含めた、2007年12月、2008年1、2月の感想リストは以下の通り。

「人間モード」はオンで―「GANTZ 22巻」

あえて「救い」のない展開にすることの意味は―「模倣犯 1~5巻」

一刻も早く治さなければならない、という重圧―「薬でうつは治るのか?」

戦いは終わらない―「麻雀放浪記 1巻」

プロ野球罰シリーズ開催希望―「団地ともお 11巻」

成立はしてるけど、傑作の幕引きとしては寂しい―「皇国の守護者 5巻」

もう誰も解脱しない―「寺と墓の秘密 誰も知らない巨大ビジネス」週刊ダイヤモンド1月12日号

井上雄彦の「覚悟」が見える―「リアル 7巻」

美しき麻雀破滅旅情―「麻雀放浪記 2巻」

いよっ、村上屋~!―「JIN 10巻」

再起不能フラグか?―「風の大地 45巻」

日本のハードボイルドはこうじゃなきゃ―「愚か者死すべし」

熟成されたワインに似て―「もやしもん 6巻」

夏目さんは「ウダウダ」を否定しない―「彼岸過迄」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年2月27日 (水)

熟成されたワインに似て―「もやしもん 6巻」

 菌もウンチクもボリューム満点、異色の農大マンガの6巻。って言っても、この巻は大学の描写はほぼ皆無で、逃げる女を男たちが追う(笑)、にぎやか・つややかなフランス編だ。

もやしもん 6―TALES OF AGRICULTURE (6) (イブニングKC) もやしもん 6―TALES OF AGRICULTURE (6) (イブニングKC)

著者:石川 雅之
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 今までのエピソードでも感じてたことではあったが、この作者、緻密にストーリーを構成するのが大好きなんだね。ウンチク話と並んで、これは作者の性分なんでしょう。

 このフランス編は、後輩男三人組が長谷川先輩の結婚を阻止できるか、というのがメイン部分なわけだ。せっかちな読者なら、このメインだけ早く解決させて、とっとと日本に戻って来いと言うだろう(笑)。でもこの作者は、そこにありったけの材料を詰め込めるだけ詰め込む

 ・フランスワイン農園の父娘の葛藤

 ・長谷川と婚約者との幼少期からの因縁

 ・川浜と長谷川の急接近

 これらは、必須というわけでなかったり、軽めに済ませても構わなかったりするエピソードなんだけど、すべて全力投球で描いてるのだ。だから展開が遅くなる。でもその分、濃密になる。最後の余韻も深くなる。

 メインの筋だけを性急に追うのでなく、手間ひまかけて練り上げられた奥行きのある複雑なストーリー。それはまるで熟成された高級ワインのふくよかな香りにも似る。…と、5年以上寝かせたワインなんか飲んだことのない私が言ってみるのだった(笑)。

 このゆっくりめの展開に賛否両論あるかもしれないけど、私は好きですね。

5巻の感想

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月14日 (月)

再起不能フラグか?―「風の大地 45巻」

 前巻の感想で、いったいどのくらいの人がこのマンガの新刊をフォローしてるんだろうとか書いたら、その後こんな場末のサイトにも「風の大地」というキーワードでの検索が思いのほかあって、「自分はひとりじゃない」と安心した(笑)。

風の大地 45 (45) (ビッグコミックス) 風の大地 45 (45) (ビッグコミックス)

著者:坂田 信弘
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 いよいよ再起不能フラグが立ってしまった、ような気がする。15番のティショット、左足首の限界が近づいた沖田が覚悟を決める場面がはっきりと描かれた。

今日でプロゴルファーの身が消滅しても構わない…

マスターズ勝利、ラストチャンスと思って戦いたい。

明日は考えまい。過去も考えまい。

 スタンス幅を狭く構えた沖田の全身を描く大ゴマがムードを盛り上げる。そしてその回のラスト、しっかりと歩みを進める沖田の見開きが炸裂。

 昨今の展開は坂田的クリシェのオンパレードで、その密度に正直目まいがすることもあるのだが(笑)、ここは良かった。

 この左足首の怪我、まだプロになって2年くらいなのに化け物みたいに強くなってしまった沖田をなんとか接戦の中に引きずり下ろそうという作者側のミエミエの仕掛けだと思っていたが、もしこれで引退まで行ってしまうとなると、怪我の意味もとらえなおさなきゃいけないな。

 あとこの巻で珍しかったのは、各話の最終ページにいつも載ってる坂田ポエムで、比較的まともなゴルフ解説があったこと。いつもは「風が吹いていた。風、吹けば、弱き人、揺れる。『ワテの勇気は空っぽの風船みたいなもんですわ。でもあのお方のは違いましたんや。ワテにも今ならそれが分かります』 人、風の中で生きる。沖田圭介、26歳と6か月の時」とか書いてあって、まったく展開に寄与することのないただのページ稼ぎなので読み飛ばしているのだが、この巻の第1話のポエムは、沖田が狭いスタンス幅で打ったボールの飛び方を解説していて、何の気なしに読んで正直びびった(笑)。

※ 44巻の感想

[MEMO]------------------------------

*しかしテキトーに作った坂田ポエムがわりとそれっぽい(笑)。誰か「坂田ポエムジェネレーター」とか作ってくれないだろうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月13日 (日)

いよっ、村上屋~!―「JIN 10巻」

 現代から江戸時代にタイムスリップした医者が、西洋医学に対する不信や偏見に囲まれながらも、同時代の医者では手が出せないような病気や怪我を治してゆく医学ロマンの10巻。

Book JIN(仁) 第10巻 (10) (ジャンプコミックスデラックス)

著者:村上 もとか
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この巻の中心は、鉛中毒で足腰の立たなくなった往年の名題役者・吉十郎に、最後の花道を飾らせてあげようとするエピソード。これが実によくできた展開と演出なのだ。

 昨年、NHKの「プロフェッショナル」で長崎尚志(浦沢直樹とともに「MONSTER」「20世紀少年」などのヒット作を生み出し、幅広くマンガ原作を手掛けている編集者)が特集されていた。そこで彼は、読者が満足するマンガの展開とは、「予想が裏切られるけれど、結末が期待に沿うものだ」と言っていた。個人的にこれはとても妥当な考察だと思う。

 で、「JIN」の展開というのは、結末は大体いつも期待したとおりなんだけど、予想を裏切る部分があまりない。基本的にみんないい人ばっかりなんで、大きく枠をはみ出る出来事が起こりにくいのだ。長崎氏の言葉に従えば、満足度はあまり高くならなそうな気もする。

 ところが、いつも満足するのだよね。それはなぜかと言えば、短い話の中でも、きめ細かく丁寧に伏線が張られているからなのだと思う。この歌舞伎のエピソードは、その好例だ。

 登場人物に「芸のために妻子を捨てた役者」と「しゃべらない子ども」を配する。「病を押して舞台にかける執念」「応急処置の不安」「客の期待感」を前フリに並べておく。それらの要素を、「初春狂言(曽我物)の内容」に掛けて、「親子のつながり」というテーマで鮮やかかつ感動的に締める。幕の下り際の「さらば!さらば!」の連呼には思わず目頭が熱くなる。

 村上屋ァ~~!」の声もかかろうかというものだ(<そんな屋号はない(笑))。

6巻の感想

[MEMO]------------------------------

*上の長崎氏の言葉、「予想は裏切り、期待は裏切らない」というあの最強生物格闘マンガのキャッチフレーズに相通ずるものがある。あっちは近年どうもなァ…。いや、まだまだ面白いんだけど、内容的に3話分を1話くらいにまとめて欲しい。コストパフォーマンスがどうにも不満で、買うのをやめてしまった…。

近藤史恵「二人道成寺」のところで書いたけど、やはりこういう見立ては効果的だ。歌舞伎は日本人がとくに美しいと思う心情を極端すぎるくらいに強調するので、そこからいろんなエピソードを派生させられそう。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年1月11日 (金)

井上雄彦の「覚悟」が見える―「リアル 7巻」

 このマンガは相変わらずすごい。そして何より、井上雄彦の「覚悟」がすごい

リアル 7 (7) (ヤングジャンプコミックス) リアル 7 (7) (ヤングジャンプコミックス)

著者:井上 雄彦
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 捨てページ、無駄なシーン、余計な展開が一切なし。とくに41話から42話あたりの情報の凝縮具合といったらないね。

 マンツーマンでプレーを封じられ苦しむ戸川を野宮のアドバイスとヨネさんのヘルプで立ち直らせ、手に汗握る接戦に持ち込み、最後は車椅子バスケならではの要素によって幕を引く。その間、新人のリョウの苦悩や野宮の決意、戸川のヤマへの思い、チームの結束も描ききる。

戸川「スマセン ヨネさん。俺のために…!」

ヨネさん「違うだろ 戸川」

(ここで一拍置くのが最高にうまい)

ヨネさん「チームのためだろ」

 ヨネさん~(泣)。フキダシにはヨネさんがしゃべっている絵を付けてないのもいい。で、セリフ直後のリョウのハッとした顔でノックダウンですよ。ほんとにマンガが上手いなあ。

 そして、ことこの作品に関しては、井上雄彦は上手いだけじゃない。「障害者スポーツ」というテーマを扱っている以上、現実に存在する障害者たちにきちんと向き合った作品にしなければ、失礼になる。それは、時代劇の中で耳の聞こえない小次郎を描くことより、ずっと難しいことだ。(例えば、ヤマのエピソードなんかは本当に難しくなってきてると思う)

 たとえ、車椅子バスケや身体障害についてよく知らない一般人に受け入れられたとしても、障害者たちから異論や非難が出てきたらこの作品は「負け」である。

 そうした作品を描き続けるには、尋常ではない「覚悟」が必要だと思う。井上雄彦を尊敬する。

 そして今のところ、この作品に対して障害者から批判が出されたという話は聞かない。今後も、そんな素晴らしい状況で作品が続くことを願う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月 7日 (月)

成立はしてるけど、傑作の幕引きとしては寂しい―「皇国の守護者 5巻」

 どんなに面白い漫才でも、オチに行く前に突然終わってしまったら、ふつう拍子抜けする。

皇国の守護者 5 (5) (ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ) 皇国の守護者 5 (5) (ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)

著者:佐藤 大輔,伊藤 悠
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 2007年にテレビを席巻した芸人として、チュートリアルの名を挙げることに誰も異論はないだろう。妄想ボケの徳井と一般人感覚あふれる突っ込みの福田の姿を、数えきれない番組で見かけた。

 ブレイクのきっかけは、2006年末のM-1グランプリでの優勝なのは言うまでもない。彼らはこの年、本命のひと組に数えられ、期待にたがわず決勝→最終決戦の2度の漫才で圧勝した。

 彼らは前年(2005年)まで長いことM-1決勝の舞台から遠ざかっていた。なのに本命視されていたのは、その2005年の決勝でやった漫才が非常に面白かったからだ。最終決戦には進めなかったが、ダウンタウンの松っちゃんが「いやあ…面白いですねえ」とコメントした(何かボケようとしたのだけどそう言うしかなかったという感じだった)ことが、ネットでは話題になった。

 その松っちゃんがほめたネタである「バーベキュー」をご覧になった方もおられるだろう。バーベキューの串に具材をどんな順番で刺すかという、なんてことない話題で爆笑ネタになるのである。つくづくすごい。

 実は私は、このネタをそれ以前に見たことがあった。その1年前の、2004年末の「オールザッツ漫才」という(ほぼ)関西ローカルな番組である。

 この番組にはあんまりな特徴があって、それは「客があまり笑わない」ということ(笑)。実に芸人泣かせで、テレビ見てる方もなんかハラハラしてしまう。

 2004年は、例年にも増して若手がスベり倒し、中堅も全くウケず、一種異様な雰囲気になっていた。今は解散したビッキーズの須知が、噛むはネタを飛ばすはの相方に向かって「NSCの子も見てるんやぞ!」と突っ込んだのが忘れられない(笑)。

 で、チュートリアルが「バーベキュー」をやったら、お客さんが沸いたのだ。そんな空気の中で笑いをとったということだけで絶賛に値する。私も、安堵感さえ感じながら笑っていた。

 そしたら、ネタがぷっつり終わったのである。ぷっつり、と言っても画面がいきなり切り替わったとかではなく、ちゃんと「ありがとうございました」で終わったのだが、それは徳井が強引に終わらせたのである。「これここまでで成立してるから。これ以上やるとおかしなるから」とか言って。まだ先のあるネタだけど、制限時間も気になるし、客の盛り上がりもいいしで、ここで終わらせようという判断だろう。

 英断だったと思う。あれ以上やってたら、後半グダグダになりそうな危うい気配もあった。失速する前に盛り上がってるところで切ったのは正しかったろう。でも、肩透かし感と食い足りなさが残ったのだよね。翌年のM-1を見て、「やっぱりちゃんと続きがあったんだな」と思ったし。

 前フリが長くなった。何が言いたかったのかというと、「皇国の守護者」は本当に面白かった。最終巻となった5巻の締めも、きちんと「成立してる」とは思う。原作との関係上、ここで幕を引くことはやむを得なかったのだろう。だが、何にせよ、物事が途中で終わるのは、見ていてあまり気持ちのいいものではない、ということだ。

 傑作がこういう形で終わるのは、実に寂しい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2008年1月 5日 (土)

プロ野球罰シリーズ開催希望―「団地ともお 11巻」

 団地に住む元気で間の抜けた小学生・ともおを中心とした、ほのぼの&シュールギャグマンガの11巻。10巻が最高に面白かったのだが、この巻も引き続きイイ感じ。

団地ともお 11 (11) (ビッグコミックス) 団地ともお 11 (11) (ビッグコミックス)

著者:小田 扉
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 10巻の感想でも書いた、このマンガの「甘辛さ」による中毒性が11巻でもフルに発揮されてる。笑えるんだけど、どこかしんみりしたり考えさせられたりという味付けが非常に後を引くのだ。

 この巻の私的ベスト5はこんな感じ。

◆ 第11話「ベースボールじゃなく野球だなともお」

 プロ野球の罰シリーズっていいなあ(<弱小球団ファンの気持ち)。「みんな燃えている…!!シーズン中でも見られなかったこの闘志…!」で噴き出す。落ちも見事すぎる。

◆ 第12話「駄菓子折で礼を尽くすともお」

 子どもの頃って、スネたり仲直りしたりが自由でいいよね。変なあだ名がすぐ付けられそうになるのは困るけど(笑)。第8話のエピソードを生かしてるところがうまい。

◆ 第13話「ツイストが大事だなともお」

 ソバ職人のおやじの意図がわからず、オチまで読んで「ああ!」となる。しかし、間さんも途中で気付くだろ、普通(笑)。まあその間抜けさがこのマンガの鍵なんだよなあ。

◆ 第14話「トモオとキノシタとともお」

 最初の2ページまででもう爆笑。「人類で最も大学に近い人間…」これはこの巻の最強フレーズのひとつ(笑)。青戸さん、大学受かるのかなあ。

◆ 第15話「のろしの世界に引きずりこまれたともお」

 これは作者の天才性が如何なく発揮された話。電話でなく「のろし」が発達したら…、という架空の設定がまず面白いし、その世界で起こり得る出来事をトコトン考えてある想像力と、そこから劇的なドラマを紡ぎだす構想力が見事。「タケシ?うん…うん、無事に産まれたってさ!!」という、このひと言がいいのだ。

 …なんか5話連続になってる。この時期の作者と私の波長がたまたまピッタリ合ったのか?引き続きこの調子で頼みます。

 まあ、私の波長にシンクロしすぎると他の人の好みの作品が減ってしまうかもしれないから、あんまり勝手を言ったらいかんけど(笑)。

10巻の感想

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年12月24日 (月)

「人間モード」はオンで―「GANTZ 22巻」

 人生は死によって覚める夢だ。

 …という帯の煽り文句がやたらと格好いい、スタイリッシュなバイオレンス&アクションの22巻。

GANTZ 22 (22) (ヤングジャンプコミックス) GANTZ 22 (22) (ヤングジャンプコミックス)

著者:奥 浩哉
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 大阪編、始まったときは正直「ちょっとないわー」と一瞬テンションが落ちたのだが、ぐいぐい盛り返してきた。

 月並みだけど、やっぱり大阪編の前に玄野が退場したのが残念だった。あのダメ主人公が暴力至上主義の理不尽なガンツワールドで生き残ることが異常にスリリングだったから。今回久しぶりに1巻から読み返してみたんだけど、改めてそのことが実感できた。とくに強烈なのは田中星人編、かっぺ星人編あたりかな。

 だが、玄野の代わりに主人公格になった加藤も加藤でいいね。こっちは正統派ヒーロー。あの正義感がガンツワールドでどこまで通用するかを見るのも、これはこれでスリリングだ。

 なにせ、敵・味方・一般人を問わず、次々と人が死ぬからなあ。肩入れしてるキャラクターが何度あっさりやられて退場となったか。下手に誰かを応援してるとほんとツラくなるときがある。

 そういった辛さを味わわないためには、倫理や道徳、理性、感情などの「人間モード」を自分で完全にオフにしてしまえばいい。そうすれば本作はラクに楽しめるだろう。でもそれだと、あくまでアクションや謎解きを表面的に摂取するだけのエンターテイメントにとどまってしまうと思うのだ。辛くても苦しくても、「人間モード」はオンで読み進めるのが、本作のいちばん深い楽しみ方なんじゃないか。

 そう思って、加藤の行く末にハラハラし続ける昨今なのであった。

[MEMO]------------------------------

*作者が何巻かのあとがきで「自分と同じ感覚の持ち主ならGANTZは本当に楽しめると思う。最終回近くのことを考えるだけでワクワクする。それを早くそういう人に見せたい」といったことを書いていた。前にこれを読んだ時から「自分と同じ感覚」の内容が気になっていて、それは上で述べた「人間モード」について、作者としてはオフ推奨なのかオン推奨なのかってこと。

 オフっぽい人なんだけど…、オンモードで読んでると最後に報われると信じたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月31日 (水)

今月?のベスト&リスト(2007年9、10月)

 10月に感想を書いた本がやたら少なくなっちゃったので、9月分とまとめてリスト化。ちなみに11月は1個もエントリを上げてない(笑)。

◆ベスト 【フィクション】   「夕凪の街 桜の国」 こうの史代

 宮本輝「青が散る」もいろいろ感慨深かったんだけど、わずかなページ数でヒロシマの60年を見事に描ききったこの作品がやはりいちばん心に残った。

◆ベスト 【フィクション以外】   「核兵器のしくみ」 山田克哉

 上の作品とセットで核について考えさせられた。昔は私もそうだったが、ぼんやりと原子力発電所に嫌な印象を持っている人には一読をおすすめする。好きも嫌いも、まず知ってからであろう。核の危険性と安全性、そして代替エネルギーが生まれない限り、この鬼子のような存在に頼って生きねばならない人間の業が理解される。

 上記の作品も含めて、2007年9月と10月の感想リストは以下の通り。

あなたのホルモー属性は?―「鴨川ホルモー」

宇宙最高のヒキ?―「MOON LIGHT MILE 15巻」

働かざる者、読むべからず―「働きマン 4巻」

心理面から見た絶望的「冤罪システム」―「『うそ』を見抜く心理学」

デビュー年にしてこの貫禄―「仲蔵狂乱」

タイガー以降の敵役の難しさ―「風の大地 44巻」

超スケールの二段オチに出会う幸福―「ONE PIECE 47巻」

核を考えるときの土台ができる本―「核兵器のしくみ」

平和の下に埋まっているもの―「夕凪の街 桜の国」

男は恋に恋焦がれて吉原へ―「吉原手引草」

親子は似るからいいのだと思う―「『親子は似る』のウソ・ホント」(日経Kids+ 2007年10月号)

これも何かの縁だ、閉店まで付き合うぞ!―「オーレ! 1~4巻」

「見立て」ができるのは作家の強味―「二人道成寺」

もし医者も患者も「死」を容認したならば―「破裂 上・下巻」

自分の青が散ったのはいつだったか…―「青が散る 上・下巻」

殴り込み前夜―「HUNTER×HUNTER 24巻」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年10月 8日 (月)

殴り込み前夜―「HUNTER×HUNTER 24巻」

 まあなんというか、無事で何より(笑)。

HUNTER×HUNTER NO.24 (24) (ジャンプコミックス) HUNTER×HUNTER NO.24 (24) (ジャンプコミックス)

著者:冨樫 義博
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この巻は、キメラアントvsハンターチームの決戦前夜という趣き。

 ゴンたちがこれからやろうとしている「殴り込み」みたいなシーンは、読者にも敵方の情報があまり与えられていない方が、ふつうは盛り上がる。

 「建物の中はどんな構造なのか?」「どんな敵がいるのか?」「ボスはどれだけ強いのか?」

 「殴り込み」の中で、主人公たちと一緒になって、読者もこうした情報をちょっとずつ手に入れていくのが楽しいのだ。

 ところが、このエピソードではやたらと「王」の描写が多い。宮殿の様子は読者には筒抜けだし、軍儀のことなんてゴンたちはひとつも知らないのに読者はすっかり承知してる。「王」の心にアイデンティティに対する疑問が生まれたこともそうだ。いつものことながら、ヒネった構成だ。

 軍儀のことやアイデンティティへの「王」の疑問が伏線として機能するのであれば(おそらくそうだろう)、ゴンたち一行がそうした事情を知る由もない以上、それを利用して勝つ展開はあまり考えられない。むしろ今の時点で予想されるのは、これらが弱点となって「王」の自滅か自殺か自壊か…につながるという流れだ。

 だってそうでもないと、あの「王」には勝てんでしょ(笑)。

 とりあえず、本誌の連載の方は10週連続掲載だそうだ。短期集中連載か(笑)。さて、この続きが読めるのはいつになるだろう…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年9月27日 (木)

これも何かの縁だ、閉店まで付き合うぞ!―「オーレ! 1~4巻」

 新しいお店を見つけて入ってみたら、メニューも雰囲気もいい。気に入って何日か通う。その矢先、店の人から「今月で閉店なんですよ」と告げられる。なんとも間の悪いことである。

 私とこのマンガの出会い方が、ちょうどそんな感じだった(笑)。

オーレ! 1 (1) Book オーレ! 1 (1)

著者:能田 達規
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 「なんか新しいマンガを開拓しよっかな」と思い、巷でたまにイイうわさを見かけるこのマンガを手に取った。この作者には、なんといっても「ORANGE」がある。あれは熱いサッカーマンガだった。というわけで、いま出ている1~4巻を購入してきた。

 話は、千葉県上総市という架空の地方自治体に勤める公務員が、地元のJリーグクラブ・上総オーレへの出向を命じられるところから始まる。

 Jリーグクラブといっても、J2でも下位に甘んじる弱小クラブだ。施設、集客、経営などにまつわる厳しい現実を目の当たりにし、主人公の身に染み付いたお役所感覚やプロサッカーに抱いていた幻想が粉々に砕かれる。だが、最初はしょせん出向先での研修と割り切っていた主人公が、チームを支える人々の熱気に触れ、いつしかこのクラブをもっともっと強くするために、誰よりも熱く奮闘することになるのだった―。

 このストーリー、ひと言でいえば、サッカー版「県庁の星」だ。

 サッカークラブを支える裏方の仕事振りが緻密に描かれているし、相変わらずこの作者の試合描写はクるものがある。J2残留戦なんか、試合展開としてはベタ中のベタだけど、泣けた。

 で、4巻まで読み終えて、さあ、これで来季以降は上を目指して少しずつステップアップする番だな、どうやら大きな資金も入りそうだし、しかしかなり長期連載にしないとゴールまでは行き着かないなあ、などと思っていたら、掲載誌では次回で連載終了だという。

 …よくあるんすよ私。好きになったとたんに別れを告げられる的なことが。さよならだけが人生だ。とほほ。

 この作品、まだ消化しきれていない要素(主に人間関係)があちこちに残されている。どんなラストを迎えるのか、せめて最後まで楽しみに待ちたいと思う。

[MEMO]------------------------------

*しかしバンチは梅川和実「ガウガウわー太」といい渡辺保裕「ワイルドリーガー」といい、まだまだ先がありそうなマンガをざっくり打ち切るという所業において、近年のジャンプの比ではない冷酷さと不可解さがあると思う。(それにしても、富樫義博「HUNTER×HUNTER」さえ帰ってくるのを待ってあげるという生温かさはいつ頃発生したんだろう)

 「ワイルドリーガー」はいま見たら、新潮社から徳間書店に版権が移って再販されているみたいだ。うーむ、まさにレッツプレイツー!

ワイルドリーガー 3 驚異のスラッガー篇 (3) ワイルドリーガー 3 驚異のスラッガー篇 (3)

著者:渡辺 保裕
販売元:徳間書店
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年9月19日 (水)

平和の下に埋まっているもの―「夕凪の街 桜の国」

 核について科学的に勉強した後は、文学的に接するのがちょうどいい。すでに知れ渡っている作品だが、私は今回初めて読んだ。最高に文学的というか、それ以上と思った。

夕凪の街桜の国 夕凪の街桜の国

著者:こうの 史代
販売元:双葉社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 普通の人が普通に生きることを、何かが無理矢理やめさせるとしたら、それはすべて「悪」だろう。犯罪しかり、事故しかり、天災はちょっと微妙だけど、原爆しかり。

 これらを「絶対悪だ」とか言うほどナイーブじゃないし、「必要悪だ」とか言うほどクールにもなれない。これらは単に「悪」と呼ぶべきだと思う。

 ヒロシマ、ナガサキに落とされた原爆をめぐっては、主に日米からいろいろな言説が出ている。

 「戦争だからしょうがない」「降伏せずに抗戦したからしょうがない」「もっとも効果的に終戦をもたらす方法だった」

 すでに起こってしまった現実と妥協的に手を結ぶという意味合いで、原爆についてこうした言葉が出てくるのは頭では理解できる。ある面では真実を射抜いているともいえるだろう。しかし、ぬぐいがたい違和感が、深く深く残る。

 それは、戦争を始めることや抗戦を続けること、そして戦争を終わらせることのどれひとつとして、ヒロシマやナガサキで原爆に灼かれた人が決めることはできなかったからではないだろうか。そういう無力な人間の命をやり取りして、今日の「平和」がもたらされたのである。

 その平和の…なんと美しいことか。本作でそれがよく表れているのは、現代編での、七波の闊達な生き方や、凪生と東子の関係の麗しさだ。その一方で、被爆した皆実や京ちゃんが、いっときつかんだけれど、すぐに手放さなければならなかった儚い幸せの描写に胸が詰まる。

 なぜ普通の生活を奪われ、なぜ死ななければならなかったのか。およそ説明がつかない無数の屍体の上に、麗しき平和は咲き誇っているのだ。

嬉しい?  十年経ったけど  原爆を落とした人はわたしを見て  「やった! またひとり殺せた」 とちゃんと思うてくれとる?

[MEMO]------------------------------

「核兵器のしくみ」には、原爆の根本原理である核分裂連鎖反応の中で、人体に害をなす放射線がいかに放出されるのかが説明されていた。ウランの核が分裂する際に、放射線源となる分裂片が数多く発生するが、そのひとつにストロンチウム90がある。この元素の核は中性子が過剰気味のため、ベータ崩壊を起こし放射線のひとつであるベータ線を放出する。これは電子の流れであるので、体の細胞内にある原子と電気的に反応して、細胞をガン化させる。

 ストロンチウムはカルシウムと同じ属にあり、化学的性質が似通っているため、人体はこれらを区別することができない。カルシウムが骨に吸収されるのと同様に、ストロンチウム90も骨に吸収されてしまう。骨の中でストロンチウム90はベータ崩壊を起こして、骨のガンや白血病を引き起こす。

 ストロンチウム90がベータ崩壊により最初にあった量の半分に減るまでの時間(半減期)は28.8年とかなり長い。そして、この期間の長さを人為的に変えることは不可能である。一度取り込まれれば、長きにわたって人体に害を及ぼすことになる。

 夕凪が何度終わっても、被爆の影響は残り続けるのだ。

*本文の最後で引用したのは、死にゆく皆実のセリフだ。これに対して、「加害者たちとてそこまでは想像できなかったはずだ、それを殊更に訴えるのは行き過ぎた被害者意識だ」と感じる人もいるのではないかと思う。そう、原爆がこれほどの被害をもたらし、その影響が長きにわたって残ることは、アメリカ側の想像をも超えているのかもしれない。

 でも、だからこそ、「自分の想像を超えるような代物を使うな」と言いたい。

*荒唐無稽な雑感だが、科学は発展の方向性を間違ったかなあ、という気がする。原子力を現実に活用する方向に突き進まなくてもよかったんじゃなかろうか、と。(これはもちろん、原子力発電が現代社会において必須の存在であることを踏まえた上で言っている)

 互いに核兵器を持ち合っていて誰も使えないから平和なのだ、という理屈は、子どもじゃきっとすぐに理解できないよ。あまり仲の良くない近所の家が銃を持ってるらしいから、ウチも銃を買って居間に置いとこう、とかいう状態なワケだ。普通に考えたらロクな世の中じゃない。

 ご近所トラブルと国家間の問題をごっちゃにするなと言う人があるかもしれないけど、歴史に残る非人道的所業は、権力者とごく少数の取り巻きの頭の中から発生することがきわめて多い。危険な隣人を抱える日本は、ご近所トラブルの結果、再びそうした所業の犠牲になる可能性が他国より高いと思われる。

 でも、もう核の技術は世界に広まってしまったからなあ。如何ともしがたい。この鬼子を半永久的に抱えながら、人類は生きていくしかないのか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年9月13日 (木)

超スケールの二段オチに出会う幸福―「ONE PIECE 47巻」

 単行本が出るごとに印税が1億入るというウワサの国民的少年マンガ、47巻。

ONE PIECE 巻47 (47) (ジャンプコミックス) ONE PIECE 巻47 (47) (ジャンプコミックス)

著者:尾田 栄一郎
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 前巻に引き続き、スリラーバークでの冒険が続く。新しい島に入って徐々にそこの全貌が明らかになってくる、このくらいの時期がいちばんワクワクするよね。その後の「ひたすら戦闘」パートは、毎度毎度新しいアイディアをよく持ち込むなあと感心はするけど、少々ダレる。

 何と言っても、この巻で特筆すべきはラブーンの伏線を回収したところ。12巻で出てきた伏線が47巻で回収されるって、かつてないスケールじゃないか?

 しかもただ回収するだけじゃなく、きちんと胸を打つエピソードに仕立ててある。12巻でルフィがラブーンを説得したときは、それだけでも成立する、イイ話になっていた。仲間は帰って来ずとも、俺とまた会おうぜ、と。

 なのに、その裏に、実は仲間はずっとラブーンを思っていたという、もうひとつの設定が用意されていたのだ。感動的な話である。

 つまりこれは、ものすごいスケールの二段オチだったわけだ。こんなことがやれるのは、現状このマンガだけだろう。長期連載に付き合ってきてよかったと心底思う瞬間である。

46巻の感想

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年9月12日 (水)

タイガー以降の敵役の難しさ―「風の大地 44巻」

 いつ行っても変わらぬわかりやすい味付けで安心させてくれる、町の定食屋のようなゴルフマンガなのであった。

 もう44巻かー。新刊は何部くらい売れてるのだろうか。普通に面白いんだけど、地味に長続きし過ぎて雑誌の掲載位置も常に最後尾だし、ひとりぼっちで読んでるんじゃあるまいかという不安がよぎる(笑)。

風の大地 44 (44) (ビッグコミックス) 風の大地 44 (44) (ビッグコミックス)

著者:坂田 信弘
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 もう長いことマスターズを闘ってきて、これまた長いこと最終日の模様を描いてる。何度も不運な(というか実にベタなアクシデントによる)2位に甘んじてきた主人公の沖田だが、さすがに今回は優勝するしかないだろう。

 ただ、どうも今回のメインの敵役であるオーウェン兄弟に、ライバルとしての魅力・迫力というか、「倒しがい」がなくて困る。暴れて暴言吐きまくるだけのパワー馬鹿の弟と、冷静で派手さに欠けるテクニック馬鹿の兄。こいつらに勝っても、いまいち箔がつかない感じ。まだどうなるかわからないけど、盛り上がりという点からいえば、シルバー・スコット・ウォーレンとアベル・コスタは優勝争いにぎりぎりまで絡んでほしい。

 …と、敵役のことを書いてふと思ったが、グレッグ・ノーマンの存在感がない(笑)。現実世界ではもう衰えてしまったのでしょうがないけど、マンガの中では沖田と熾烈な闘いをしてから一年くらいしか経ってないんじゃないのか。あれほどスゴい存在として描かれてたのに、長期連載の時の流れは残酷だ。

 森秀樹「青空しょって」でもそうだったけど、ゴルフマンガで強敵といえばノーマンをモデルにしとけば文句は出なかったわけです。あの風格のある強さは、発展途上の主人公が挑むのにふさわしかった。

 だがノーマンが下り坂になるのと入れ替わりに、ゴルフ界ではタイガー旋風が吹き荒れる。彼は現実にヒーローそのものなので、敵役として登場させるのは非常に難しい。マイノリティながら爽やかに勝ち続ける彼を、同じ有色人種であるところの日本人キャラが倒しても、カタルシスは得られにくい。

 だから「風の大地」では、シルバー・スコット・ウォーレンがいちばん格上の敵になっているのだろう。このキャラは、タイガーの強さをそのままに、人種を黒人から白人に反転させて、人種差別主義者的な性格付けで敵役に仕立て上げたものといえる。

 そのぐらいやらないと、タイガーはヒーロー過ぎて敵役にならないってことだろう。タイガー登場以降、ゴルフマンガは敵役に苦労してる。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年9月 7日 (金)

働かざる者、読むべからず―「働きマン 4巻」

 「働かざる者、(この本を)読むべからず」。

 「べからず」は、禁止というより、可能・不可能の意味。だってあまりに主人公の働く姿がまぶしいから…。まぶしくて読めない人が続出しそう。

働きマン 4 (4) (モーニングKC) 働きマン 4 (4) (モーニングKC)

著者:安野 モヨコ
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 雑誌編集部で働く主人公・松方弘子の仕事ぶりが、とにかくガムシャラで有能なのだ。成功するのも失敗するのも、どれもサマになっていてまぶしいのだ。

 忙しい仕事の合間をぬってハワイでの友人の挙式に出るも、担当作家の原稿が落ちて急遽日本に戻る羽目になる弘子。まぶしい。デスクの急病で代理に抜擢され、自分の原稿だけでなくメンバーの尻拭いにも奮闘する弘子。まぶしい。そんなハードな日常にもへこたれず、新しい恋にときめき、実家の父の姿に勇気をもらう弘子。まぶしいっす…。

 そんなまぶしさにどのくらい耐えられるかで、このマンガとの相性が決まる。何のためらいもなくこのマンガを楽しめる人は、定職についていて、かつ自分の仕事ぶりに満足している人だけじゃないか??あと前途有望な学生とか。私はスネの傷をチクチクつつかれてるようで、読んでいていつも落ち着かなくなる。

 でも、面白いのだ。新刊が出るたび買ってしまう。なんとも厄介なマンガである。

[MEMO]------------------------------

*この巻でいちばん笑ったのは、ブルボンヌ緋魅子先生の強烈な叫びによる幕引き。「これで締めかい!」と(笑)。同じ意見の人は多いのでは。

*この巻で、大手スーパーの産地偽装のエピソードがあるが、そこで吐かれる責任者のセリフがリアルで腹立たしい。

高い国産のだけ並べても客は買えないんだよ。外国産でも「国産」って書いてやることで安心するんだ。安心して買えれば中身はどっちでも同じなんだよ。

 これが偽装をするスーパーの典型的な言い分だと思う。これを聞くとやっぱり腹が立つ。「外国産」と「国産」の正しい表示に基づいて消費者が選択する機会を奪ってるわけだから。どっちを買うかはこっちの自由にさせてくれよ、と。

 それができないのは、自分のスーパーだけ正しい表示をしてたら、偽装してる他のスーパーに出し抜かれるから。「客のためにしてやってるんだ」みたいなことを言うけど、ホントは自分たちのためだろう?

 おまけに、ニセの「国産」をのさばらせて、日本の農漁業を営む人たちを苦しめてもいる。消費量が低下してるから「国産」はさらに高くなるのだ。「高い国産」を生み出してる自分たちの偽装を棚に上げてホントよく言うよと、このセリフを見て思った。

 互いに疑心暗鬼にとりつかれた偽装スーパーが薄いもうけを出したって、結局だれも幸せにならない。食品衛生監視員なんかをどんどん増やして、検査体制と罰則の強化をして、「偽装は損になる」仕組みをしっかり作らないと。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年9月 5日 (水)

宇宙最高のヒキ?―「MOON LIGHT MILE 15巻」

 今、これより面白いマンガがいくつあるだろうか?

 あえて挑戦的に問うてみたが、決して言い過ぎではない。SF、アクション、ヒューマンドラマの最高水準をこれでもかと見せつけ続ける、熱い傑作の15巻。

MOON LIGHT MILE 15 (15) (ビッグコミックス) MOON LIGHT MILE 15 (15) (ビッグコミックス)

著者:太田垣 康男
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この巻で、次世代エネルギーを埋蔵する月面をめぐり、世界はアメリカ陣営と中国陣営に分かれ、新たな冷戦の時代が到来することとなった。それを象徴する宇宙での戦闘に、まず興奮する。10巻ぶりに出てきたツェン・リーのふてぶてしさも嬉しい。

 しかる後、吾朗とロストマンが恩讐を超えてこれまでの来し方を振り返る。いっときは完全に袂を別った二人だけに、精神的な絆が決して消えていなかったことにこれまた感動する。

 そして、ラストだ。これはない。次の巻が出るまでに半年近く待たされるのにこれはない(笑)。

 ロストマンの運命はいかに!?まさか死んだってことはないと思うが、その前に吾朗と過去を振り返っていたのがイヤな感じだ。

 これほどヒキの強いラストはそうそうないよ。このマンガでいえば、8巻ラストの温室で捕らわれたときのヒキと、10巻ラストのムーンチャイルドを堕胎させられそうになったときのヒキを足し算したくらいは強烈か?どちらも「早く次の巻出てくれ!」と思ったけど、でももしかすると、今回のヒキはこのふたつの掛け算をも上回るかもしれない。

 基本的に単行本派なんだけど、これは思わずスペリオールを手に取って連載を読みそうになる。く、狂おしい…(笑)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月31日 (金)

今月のベスト&リスト(2007年8月)

2007年8月に読んだ本のベストは以下の通り。

◆ベスト 【フィクション】   「団地ともお 10巻」 小田扉

団地ともお 10 (10) (ビッグコミックス) 団地ともお 10 (10) (ビッグコミックス)

著者:小田 扉
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この8月はちょっと感想少なめだった。でもそれ以外にもいろいろ読んではいるのだ。「感想を書くほどでもない」と判断したものは記録に残ってないということ。その意味で、まずここに感想を書いた本たちは、気に入ったものばかりだといえる。さらにその中で今月はこれが一等とは(笑)。自分でも驚きだぞともお。

◆ベスト 【フィクション以外】   「輸入食品の真実」 小倉正行

食品のカラクリ6 輸入食品の真実!! (別冊宝島 1458) 食品のカラクリ6 輸入食品の真実!! (別冊宝島 1458)

著者:小倉正行
販売元:宝島社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この本はヒマなときにパラパラ見返して、スーパーで安い外国産にばかり手を出しそうになる自分を戒めたい。食料自給率を押し下げてる要因はいろいろあると思うが、その根っこにあるのは、やっぱり国民ひとりひとりの購買行動・食行動だと思う。

 上記の作品も含めて、2007年7月の感想リストは以下の通り。

どちらかがズレた―「ショート・プログラム3」

逆転に次ぐ逆転が見たかった―「議論のウソ」

恐いものは、恐いのだ―「顔は口ほどに嘘をつく」(第1章~第4章)

ベストがしぼれないよともお―「団地ともお 10巻」

闘犬は泣くか―「医龍 14巻」

あほな…の連発必至―「輸入食品の真実」

インモラルでも、信じたい―「電波の城」

どなたか、読んで聞かせてください―「アラビアの夜の種族 第二部」

これが男子小学生のスタンダードだ!―「おやすみプンプン」

「防げる」と「防げた」は違う―「自殺の心理学」

四重メタ構造、堂々の完成―「アラビアの夜の種族 第三部」

サスペンス脳優位がもたらす悲しみ―「アヒルと鴨のコインロッカー」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月12日 (日)

これが男子小学生のスタンダードだ!―「おやすみプンプン 1巻」

 明らかに変だけど、まっとうだ。単行本の帯に「シュール×リアリズム」とあるのは言いえて妙。

 表紙買いしたもので、この作者のマンガも初めて読んだけど、ちょっとハマってしまった。

おやすみプンプン 1 (1) (ヤングサンデーコミックス) おやすみプンプン 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)

著者:浅野 いにお
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 何がシュールかといえば、まず主人公・プンプンの造型だ。なんというか、コトリのオバQみたいな、やる気のない、でも可愛らしい外見をしてる。出てくる大人たちがまた、まともに見えてイカレてる(けどまとも)。さらに「神様」ってのが不可解すぎる。なんですか、あの明らかに写真のコピーをトレースしてるだけのにこやかな微笑みは?(笑)

 そして、最大にシュールなポイントは、随所にちりばめられたサイケな心象表現だろう。私がとくに気に入ってるのは、「あたしもプンプンが好き」と言われた後に目から飛び出したプンプンの光学的配列と、どうしようもなくこんがらがったプンプンの頭の中でうごめくカオスなタペストリー。最初はびっくりするけど、よく考えるとこれ以上的確で斬新な表現ってないかもなあ、と感じる。

 しかも、そうしたサイケな表現は、浮いてない。実は、ストーリーは至極まっとうで地に足がついており、シュールさはそれを効果的に見せるための装置に過ぎないともいえる。

 たとえば、プンプンは「弱気な男子小学生」の見事なリアルスタンダードだ。自分にあまり自信がない。でも唐突に大きな将来の夢を抱く。それは好きな女子の出現が引き金だ。その子は大人への扉をちらっと開けてくれる。扉の向こうには「自立」や「性」のカオスが見える。自分がこれまでの自分じゃなくなる予感がする。

 それは、この年頃の多くの男子小学生がたどる道だ。その道をとたどりながら、男子は、この世に「男」と「女」という自分とは異質な人々がいることを知る。私も、忘れていたリアルな感覚が記憶の底からよみがえってきて、「このマンガ、よくできてるわあ…」と感嘆してしまった。

 シュールな表現とリアルな物語、前者だけだったら私はあんまり好みじゃないんだけど、後者がよくできてるんですごく気に入った。1巻のラストも期待感たっぷり。ここでヒキですか、2巻購入決定ですなあ、という感じ。

[MEMO]------------------------------

*しかし、最後はホロ苦い結末にならざるを得ない気がして、ほんのちょっとブルー。この子らには幸せになって欲しいが…。

*プンプンパパ、プンプンママ、プンプンと来て、おじさんの名が「小野寺雄一」なのはなぜ(笑)。そして、愛子ちゃんがそのおじさんを目の前にしながら、プンプンの家を訪問してると気づかないのは、どういう訳か?

 ①プンプンみたいな生物は実はいっぱいいる、②他人から見るとプンプンたちは普通の人間に見える、③愛子ちゃんはずっと目を伏せてておじさんを見てなかった、の3つの可能性くらいしか思いつかない。う~ん…。こだわるとこじゃないのか。

*この作者に「ソラニン」という代表作があるのだけは知ってるけど、まったくの未読。これは読んでみる価値がありそうだ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月 9日 (木)

インモラルでも、信じたい―「電波の城 4巻」

 見えてきた。物語の核が。

 北海道のFM局からテレビ局のお天気お姉さんとなった主人公が、困難な状況に負けず頑張る物語、…ってあらすじをまとめると全然違う話だ(笑)。

電波の城 4 (4) (ビッグコミックス) 電波の城 4 (4) (ビッグコミックス)

著者:細野 不二彦
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この巻で、ついに主人公の天宮詩織の過去が詳細に語られる。ここに至って、物語はピカレスク・ロマンになった。

 今までは、主人公が北海道のFM局で何をやってきたのかが明らかにされていなかった。まず読者は、東京に出てきた主人公が不公平なオーディションや先輩女子アナのいじめを乗り越える様子を目にしてきた。当然、主人公に肩入れしちゃうわけだ。

 ときおり、主人公の恐い一面が出たり、過去の悪事がほのめかされるのを見たりもした。でも、すでに感情移入しちゃってるので、「まあそういう面もあるよね」「悪事って言ったって周囲の誤解なんじゃないの」とか思っていた。心の底で、「だってこんなにキレイでけなげな子がそんなことしそうにないよ」とかいう意識があったのだろう(←騙される男の典型(笑))

 それなのに、嗚呼それなのに。悪事はまごうことなき悪事で、主人公はまさしくピカロ(悪者)だったのだ。この感情の揺さぶられよう!一級品のストーリーテリングのなせる業である。

 だが、待ってほしい。細野不二彦の作品において、主人公がインモラルであることは珍しくない。「ギャラリーフェイク」の藤田しかり、「ダブル・フェイス」のDr.WHOOしかり、「ヤミの乱破」の桐三五しかり。枚挙にいとまがない。

 そして重要なのは、そうしたインモラルさの裏に、必ず彼らなりの信念と道義があるということだ。藤田は贋作を作る裏で、自分を追放した旧弊な美術界から本当に美しい作品を守ろうとしていた。Dr.WHOOや桐三五の背負っているものはまだ完全に明らかになってはいないが、非合法な行為の裏に、なにがしかの納得できる事情がある。

 要するに、細野マンガの主人公は、インモラルだがアンフェアじゃない。悪いことをしているとしても、読者の感情移入を許すだけの正当な理由を必ず併せもっている。

 それは、「電波の城」の天宮詩織にも、きっとある。それこそがこの物語の核だ。この巻でその核の一部が少しだけ明らかになった。

 核は、天宮詩織の家族をめぐる因縁だろう。おそらく、父に(あるいは母にも)非業の死を遂げさせた「仇」への復讐ではなかろうか。

 ヒントは、この巻の第32話での「一人きりの身寄り― 彼女の父親が倒れたころだった」という仁科の述懐、第39話での「私の父も昔、放送関係者だったんですよ」との主人公のセリフ(これは前にも出てたかも)だ。

 「天宮の背後の組織は強大です!」「地獄でさんざドブさらいをつとめたあげく、ヒョイと現世に還ってきた、そんな女さ!」とまで言われる主人公が、なぜわざわざテレビ局に入ってフツーに身を立てていこうとしているのか。それは、放送界にいる親の仇を突き止め、復讐するという目的があるからではないか。

 今後ここに、取材の行きすぎを咎められて不遇をかこつ事件記者と、海外から凱旋帰国した人気キャスター、それに天宮の背後に控える「組織」が、有機的に絡んでくるはずだ。面白くならないわけがない。

 未読の方は、ぜひ今のうちに!!

[MEMO]------------------------------

*1巻の頃は、個別のエピソードは面白いが、全体としてどこに向かうのかよくわからなかった。それがこの巻で物語の構図が見えてきて、俄然推進力が増した。今になってみると、茫洋とした出だしもみな計算だったことがわかる。物語の筋はかなり先まで考えられているようだ。

 この作者のこうしたストーリーテリングの力には、いつも感心させられる。個人的に好きな作品は多いのだが、物語の構成という点で質・量ともにケタ外れなのは、「東京探偵団」だと思う。一話から数話で終わる短編のエピソードが、その着想の大胆さ、展開の奇抜さ、見せ方の巧妙さ、オチの意外さに、どれをとってもうならされる。

 やや古い作品で、時代性に左右される側面もある。とくに、「昭和」を知らない人にはおすすめしにくい。だけど、「ギャラリーフェイク」あたりから入った人には、ぜひ一読してほしい傑作です。

Book 東京探偵団 (1) (MF文庫)

著者:細野 不二彦
販売元:メディアファクトリー
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月 7日 (火)

闘犬は泣くか―「医龍 14巻」

 権謀渦巻く大学病院を舞台に、迫真の手術シーンと熱い人間ドラマを描いて快進撃を続ける医療マンガの14巻。文句なし。傑作。

医龍 14―Team Medical Dragon (14) (ビッグコミックス) 医龍 14―Team Medical Dragon (14) (ビッグコミックス)

著者:乃木坂 太郎,永井 明
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この巻は、動脈硬化を起こした心臓に血管をつないで血行再建を図るという難手術の場面で、まるまる1冊使っている。そこでの最優先事項が、実になんというか大学病院らしい。

 最優先なのは、手術を成功させて患者を治すことじゃない。

 この手術の経過と結果を、教授選にどう活かすかだ。

 選挙で掲げた公約と自分自身の願望のあいだで揺れる霧島軍司。その葛藤につけ込む権力の鬼・野口教授。患者の命そっちのけ…とまではいかないが、話のメインは明らかに手術よりも二人の極限状況での心理戦だ。

「僕は、もう少し伊集院くんの話を聞きたいなぁ~~」

 …と言ったときの野口教授のダーティな微笑み!

「一度泣いた闘犬は、二度と闘えないと知っているのだ」

 …という霧島軍司の焦燥!く~、手に汗握る。

 そしてこの巻のもうひとつの見どころが、霧島軍司をめぐる木原助手と伊集院くんの薔薇色の三角関係だ。もう、木原センセイが哀れで哀れで…(笑)。

 でも、今後きっと主人公の朝田が活躍し、霧島は納得し、野口教授が苦虫を噛みつぶし、伊集院くんが成長を見せ、ついでに木原センセイが救われる展開になるのだろう。どうやったらそうなるかちょっと想像つかないのだけど、この作者の収まるべきところにシナリオを収める技は天下一品だ。

 ただひたすら、次巻が待ち遠しい。

[MEMO]------------------------------

「大学病院のウラは墓場」では、大学病院が最先端医療の追究をおろそかにすると、未来の医療が危うくなると警告されていた。そこで、大学病院は一般の病院と差別化し、高度な治療を受けられる場所として特化すべきだという意見が述べられていた。ただの風邪でも東大病院にかかる患者の話も紹介されていて、確かにそういう人が大挙して押しかけることで大学病院を疲弊させているという面はあるかもなと感じた。

 で、霧島軍司の標榜する「誰にでもできる手術」というのはどうなんだろう。大学病院でそんな簡単な手術ばかりやる意味はあるのだろうか(今回の心臓手術は決して易しいものではなさそうだけど)。ミスを避けていれば医療事故や訴訟は起こりにくくなり、医局は安泰かもしれないが、医学の進歩への貢献は皆無に等しくなるのでは。

 霧島軍司のような人が医学部の教授になろうとすることを、現実の医者はどう思うのか、ぜひ知りたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月 6日 (月)

ベストがしぼれないよともお―「団地ともお 10巻」

 昭和50年代あたりをホーフツとさせる、団地暮らしの小学生ギャグマンガ、第10巻。これだけ単行本が出てて、いつも楽しんで読んでるはずなのに、この巻が今までで最高に面白かった気がする。不思議だ(笑)。

団地ともお 10 (10) (ビッグコミックス) 団地ともお 10 (10) (ビッグコミックス)

著者:小田 扉
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 とぼけた笑いと、さりげない情感がほんとに絶妙。いつまでも読んでられる。甘いものと辛いものを交互に食べると、満腹の限界を超えて食べ続けてしまうような感覚。

 その絶妙の甘辛さがこの巻は極まっていた。私的ベスト5は以下の通り。

◆ 第1話「最後の最後にきまったなともお」

 おおみそかの色んな番組の音声が奇妙につながっていくテクニカルな話。「メリーの血の色は、一体何色なのでしょう!?」「白です!白組優勝です!」…なんてバカな接続を思いつくんだ(笑)。

◆ 第6話「まだ魔法だったようだともお」

 「知らぬ間に内股!?」これだけで笑えるんだが、漢っぷりと乙女っぷりを交互に見せる最後の畳みかけがまたスゴい。

◆ 第8話「さて右か左か前か後ろかともお」

 ともお版「ラン・ローラ・ラン」みたいな話。忙しい週刊連載の中でこんな話をよく描ききるなあ。あとケリ子から借りてた本が、「魔法少女 忠臣蔵」(笑)。

◆ 第9話「ガツンと言ってやれよともお」

 この巻の表紙にもなってる、ダメ3人組が手をつないで人探しをするエピソード。秀逸なのは、あえて3人組にそれぞれケガをさせているところ。この設定のおかげで色んな可笑しさが生まれてる。夕陽の海を見てるシーンのしみじみとした間抜けさが絶品(笑)

◆ 第13話「珍しくとは失敬だよなともお」

 ともおの家でひっそり住んでたクモの、クールでエキサイティングな旅が実にいい。昔の男(というかクモ)が「奇跡だ!戻ってこれるなんて!」って言ってるけど、たぶんともおの父と祖父の家を宅急便で往復しただけだろう(笑)。

◆ 第14話「パンチとハングリーで最強だともお」

 3年間の努力がどんどん乗り越えられていく展開がすごい(笑)。「決勝戦だ!」…って続きが見たい~。

◆ 第15話「心は透けて見えないねともお」

 猫の達観ぶりがいい(笑)。団地の人の親切もいい。とぼけててやがていい話。

◆ 第16話「ぐんぐん伸びるよなともお」

 これはオチを言っちゃうわけにはいかんね。この巻最大の爆笑。

 …ベスト5と言っておいたくせに、8つある(笑)。いや、書いてる途中で5個に絞るのは無理だなとあきらめました。それ以外にも面白い話はあるし。

 あと、各キャラクターがまるで実際に生きて暮らしているかのような、細かい生態の描きぶりに、いつものことながら感心した。第6話にバイオ部で「大会近いんだぞ!」「大会ねーよ」というやりとりがあった後、第11話で黒板にひそかに「バイオ大会開くには」って書いてあるし(笑)。青戸さんは福引で当たった自転車で早速旅行に行くし。こういうのが隠れたギャグになってるところに、またお得感があるのだ。

ラン・ローラ・ラン ラン・ローラ・ラン

販売元:ポニーキャニオン
発売日:2003/08/20
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年8月 1日 (水)

どちらかがズレた―「ショート・プログラム3」

 あだち充は、短編の名手だと思う。短編集「ショート・プログラム」の1巻は特に好きだったが、それに限らず、長編マンガの中でのショートエピソードが抜群にうまい。

ショート・プログラム 新装版 3 (3) (少年サンデーコミックス) ショート・プログラム 新装版 3 (3) (少年サンデーコミックス)

著者:あだち 充
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 「ラフ」があだち充の最高傑作だと思っていると前に書いたけど、あの作品がその典型例。短いもので数話、長いもので1巻分くらいのエピソードが、どれも本当によくできてる。展開は意外性があるし、セリフ回しは気が利いてるし、叙情性も申し分ない。

 それなのに、去年出た短編集「冒険少年」は、(どの話も面白いんだけど)「これだ!」と感じ入るものがなかった。長編マンガも、最近は何となく追うのをやめてしまった(何となく、というのが実はいちばん根が深い)。要するに、あだち充と私の嗜好がだんだんかみ合わなくなってきたわけだ。

 それは、どちらがズレたんだろうか、と疑問に思っていた。青春を描き続けるあだち充の世界に、その年代を過ぎた自分が感情移入できなくなったのか。それとも、時代の移り変わりの中で、あだち充の世界の方が古めかしくなってしまったのか…。

 そこで、今回の「ショート・プログラム3」である。

 うむ、ウマい。楽しめる。

 でも、瑣末なことが気になる。ヒロインが訳もなく主人公に惚れすぎじゃないかとか、脇役がいいヤツすぎないかとか、そこで死ぬ意味あるのかとか…。

 これでよくわかった。ズレたのはやっぱり…。

[MEMO]------------------------------

*ズレたのはやっぱりどっちやねん、と皆さんお思いかもしれませんが、これはあれです、東野圭吾「どちらかが彼女を殺した」の趣向です(笑)。これは、容疑者が2人いるのだけど、そのどちらが犯人かを最後まで明かさず、作品中の手がかりから読者が推理してね、という異色の推理小説。アマゾンレビュー見ると、賛否両論(笑)。私は好きですが。

 なんで私の感想までそんなことをしてるのかというと、この「ショート・プログラム3」にある「天使のハンマー」という話が、「どちらかが彼女を殺した」を連想させたから。以下、ネタバレ含む推理。

 ここでの謎は、雪の中で死んでいるのが、島を出て挫折した俊道か、出世した心太かということ。はっきりとどっちだとは描かれていない。物証は乏しいので、登場人物の心理や作品の演出も考慮に入れて推理すると…。

【死んだのは俊道説】

  1. 倒れている死体の向きが、俊道の立っていた方向と同じ。
  2. 自分の惨めさを知られたくらいで幼馴染を殺すか?それなら、偶然とはいえ幼馴染を恐喝するほど落ちぶれた自分に絶望して自殺する方が自然ではないか。

【死んだのは心太説】

  1. 死体の着ている服が、心太が取り換えて着させられたジャンパーである。
  2. 心太が俊道を殺す理由はない。また、俊道が自殺しようとしても心太は止めるだろう。俊道がここで死ぬ可能性は低い。
  3. 現場には心太のカバンが落ちている。仮に心太が生きているとしたら、自分のカバンをそのままにしては行かないだろう。
  4. 最後の死体の場面につながるモノローグで、俊道とずっといっしょにいられることを願っているのは心太である。心太は子どもの頃、雪の降る中でそう願ったけれど、春が来て俊道は心太を置いて行った。最後、雪が止んでいるのは、同じことが再び繰り返されたことの暗示なのでは。

 こうやって比較すると、どう考えても心太が死んだとするのが有力だ。論理的に物事を考える人には、自明のことだったかもしれない。でも、感情的には納得いかないですよ、これ。あまりに救いがない。武論尊原作の「白い夏」もそうだけど、ちょっと人の命が軽すぎるんじゃないか。

*個人的に好きな話は、「下駄とダイヤモンド」(1999年)、「どこ吹く風」(1992年)、「メモリーオフ」(2000年)と、かなり前の作品が多い。「H2」も1999年までの連載だし、ちょうどこの頃がひとつの分水嶺なのかな…。

どちらかが彼女を殺した どちらかが彼女を殺した

著者:東野 圭吾
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月31日 (火)

今月のベスト&リスト(2007年7月)

 2007年7月に読んだ本のベストは以下の通り。

◆ベスト 【フィクション】   「一瞬の風になれ」 佐藤多佳子

一瞬の風になれ 第一部  --イチニツイテ-- 一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ--

著者:佐藤 多佳子
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 万人におすすめできる青春小説。近い将来の映画化も間違いない。

◆ベスト 【フィクション以外】   「救急精神病棟」 野村進

救急精神病棟 救急精神病棟

著者:野村 進
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 「社会保険庁スキャンダル」と迷ったけど、情報量の多さと、それだけの情報を収集・分析した筆者の労力を評価してこっち。Mr. Childrenの「Everybody goes」という歌に、「みんな病んでる 必死で生きてる」という歌詞があったのはもう10年以上昔だが、それが洒落でなくなるくらいに、いま日本人全体の精神病リスクが高まっている。そんな状況にあって、この本で描かれている精神病棟の様子は、まさに「一筋の光明」である。

 上記の作品も含めて、2007年7月の感想リストは以下の通り。

犯人は、だれか―「私はなぜ社説を盗用したか」(論座2007.7月号)

鉄は熱いうち?―「男の子の鉄ちゃん脳は0歳から始まる」(AERA 2007年7月9日号)

小説に最適の部活かも―「一瞬の風になれ 第一部」

号泣する伏線はできていた―「一瞬の風になれ 第二部」

太るとタイヘン、やせるのタイヘン―「人はなぜ太るのか」

記憶の湖をのぞく―「パイロットフィッシュ」

勝者の中の勝者―「壊れた脳 生存する知」

メリンコミニスタの奥義炸裂―「ピューと吹く!ジャガー 13巻」

心は生成するもの―「心はどのように遺伝するか」

エネルギー・ゼロへ―「一瞬の風になれ 第三部」

ビビり役、大活躍―「ONE PIECE 46巻」

ある意味、結果より過程が大事―「データの罠」

「時代」を活かした傑作―「玻璃の天」

閉じた環の中で生きる―「土星マンション 1~2巻」

精神病の急患を救え―「救急精神病棟」

僕たちも、戦争に手を貸している―「となり町戦争」

有難う―「バガボンド 26巻」

日本の医療は今夜が峠―「大学病院のウラは墓場」

その化学物質を誰が止めるのか―「中国トンデモ食品大全」「中国食品『毒抜き』調理法」(AERA 2007年7月30日号)

優しさが止まらない―「アジアンタムブルー」

ブーメランが戻ってきた―「ヒストリエ 4巻」

妖術の幕開け―「アラビアの夜の種族 第一部」

積み立てたモラルを返せ―「日本をニヒリズムに陥らせた社会保険庁スキャンダル」(中央公論 2007年8月号)

理想は証言が不要になること?―「証言の心理学」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月27日 (金)

ブーメランが戻ってきた―「ヒストリエ 4巻」

 ついにこの巻のラストで、話が1巻につながった。すごく前に投げたブーメランが、大きな環を描いてようやく元のところに戻ってきた感じ。 

ヒストリエ 4 (4) (アフタヌーンKC) ヒストリエ 4 (4) (アフタヌーンKC)

著者:岩明 均
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 正直、前巻がどんな展開で終わってたか思い出せずに、3巻を読み返してしまった(笑)。…おおそうだったそうだった、と復習してからこの巻へ。

 そこからはもう一気。村の窮地を救うエウメネスの頭脳と度胸、さらにはそのモテっぷりまで見せつけられて、こっちまで何だかヒーロー気分だ。

 出色なのは、エウメネスがティオス市との和睦を壊さぬように自分を悪者に仕立てて演説するシーンの見開き。この「パフラゴニアにて」のエピソードで作者が描きたかったのは、突き詰めればこの絵一枚でしょう。…って、突き詰めすぎ?(笑)

 次巻からは、大きなブーメランの環を飛び出して、やっと話が前進するわけだ。有り体に言えば、「ブーメラン投げる必要あったのかな」(普通にカルディアでの子ども時代からスタートして時系列に話を進めてもいい気がする)とも思うんだけど、まあいいか(笑)。

 今後、何を見せてくれるのか。ほんと先が読めない、期待大の一作。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月23日 (月)

有難う―「バガボンド 26巻」

 剣豪・宮本武蔵の成長を描く物語の26巻。一人対七十人の殺し合いに1冊まるまる使うという、なんとも殺伐とした巻(笑)。

バガボンド 26 (26) (モーニングKC)

著者:井上 雄彦,吉川 英治
販売元:講談社
発売日:2007/07/23
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 前半は無慈悲な武蔵の強さに戦慄と快感をおぼえる。しかし後半は蓄積する疲労によって武蔵が少しずつ窮地に陥っていく様子に、息苦しくなってくる。

 武蔵と吉岡道場のこの死闘、いかなる決着がつくのか。ただでさえ気になるところに、植田の「あいにくまだ死なねえよ」のヒキ。今すぐ続きを出してくれ!!(笑)

 巻末にある作者コメントが興味を引いた。

9年描いて初めて書ける台詞があったことに気づく。たった一言の台詞が含むものを過不足なく伝えるのには、それだけの時間の積み重ねが必要だったみたいだ。…どの台詞かは内緒。

 …とあるのだが、内緒って言われると余計に「どれ?」って気になるよね(笑)。私としては、226話「吉岡の懐」にある、「有難う」という武蔵の言葉だと思うんだけど。

 かつて吉岡道場に殴りこんで清十郎・伝七郎の兄弟に敗れた後、燃えさかる炎を背に叫ぶ武蔵の姿に、当時ゾクゾクしたことを鮮明におぼえている。あれから作中では1年しか経過していないが、作者も私も、何倍もの年月を経てきたんだなあ、と来し方を思い返してひとしきり感慨にふけってしまった。

 この「有難う」は、吉岡に生かされた結果、今の強さに至ることが出来た武蔵の、「9年分の1年」が凝縮された台詞だと思う。作者の意図と合ってるか知らないが、私の中では、この台詞こそ答えだってことにしておくつもり。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月19日 (木)

閉じた環の中で生きる―「土星マンション 1~2巻」

 土星マンション、といっても舞台は土星ではない。あくまで地球の話。ただこのマンションは、地上35000メートルの成層圏に、まるで土星の輪のようにリング状に築かれて宙に浮いている。

 その中で、人々は上層・中層・下層の三層に分けられて暮らしている。隠然たる差別の中で、下層住民ほど貧しい暮らしを余儀なくされている。主人公は、下層に住み、マンション外壁の窓拭きをして生計を立てている少年だ。

土星マンション 1 (1) 土星マンション 1 (1)

著者:岩岡 ヒサエ
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 現時点でのドラマの柱は二本。ひとつは、主人公に窓拭きの仕事を依頼してくる人たちの人間模様で、もうひとつは、同じ窓拭きの仕事中に亡くなった父の姿を少年が少しずつ知って、成長していく過程だ。

 ウェットすぎず、平板すぎず。主人公が父に対して抱く葛藤の描き方も、決して深刻になりすぎない。それなのに、頭身の小さい登場人物たちのとぼけた行動と、ときに語られる真剣な言葉が、妙に余韻を残す。

 個人的には、ストーリーの二本柱のうち、少年の成長にまつわるエピソードにしみじみとする。2巻で、主人公が仕事中にアクシデントに遭った後の「ヤスミノヒ」から、主人公に複雑な思いを抱く先輩のわだかまりが少しほどける「手の先に」までがとくに良い。

 とにかく、これは楽しい思考実験だ。この舞台設定の中でどれだけ豊かにアイディアを生み育てられるかという、「土星マンション」と作者の知恵比べに、いつまで作者が勝ち続けられるか

 もし、ストーリーの三本目の柱として「現在の地上の状態をめぐる謎の解明」がビシっと立てられるようだったら、この作品はさらに面白くなりますよ。その予兆が少しだけ認められるので、今後に大きく期待したい。

土星マンション 2 (2) (IKKI COMICS) 土星マンション 2 (2) (IKKI COMICS)

著者:岩岡 ヒサエ
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月15日 (日)

ビビり役、大活躍―「ONE PIECE 46巻」

 説明不要の海賊冒険マンガ。46巻を迎えてなお、衰える気配いっさいなし。

ONE PIECE 巻46 (46) (ジャンプコミックス) ONE PIECE 巻46 (46) (ジャンプコミックス)

著者:尾田 栄一郎
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 小難しいことは考えずに、心から楽しめる。この巻は新たな冒険の導入編だが、新情報を少しずつ出してジワジワ盛り上げ、ラストでドカンと次巻へ続く!!…へともっていくこの手綱さばき、やはり並大抵じゃない。

 演出もさすが。今回の島・スリラーバークは、ホラー仕立て。これを読者に「コワく」見せるためには、狂言回しのビビり役が欠かせない。スポーツマンガで観客が「スゲぇ!」とか言ってプレイヤーを引き立たせるように、「コワいよう~!」と言って読者にそれを伝える人物が必要だ。

 となれば、この島に上がる先発隊はナミ、ウソップ、チョッパーの3人しかいない。他のメンバーだと、心身ともに強靭すぎる。この3人がまず上陸してくれたおかげで、ケルベロス、ゾンビ、お化け屋敷などのおどろおどろしさを、読者としては十二分に堪能できる。

 そういう展開に無理なくもっていくところが、作者の巧みさですなあ。

[MEMO]------------------------------

*「完全図解!サウザンドサニー号」には心底感心した。その詳細さもさることながら、すみずみまであふれている遊び心に。私が子どもの頃だったら、もう自分がこの船に乗り込みたくてワクワクですよ。作者はほんとに子どもの気持ちをよくわかってる。もしこのマンガがつまらなくなるとすれば、それは作者が年を取って行って心の中にある「少年」が消えた時だろう。

 少年マンガは、マインドでなくハートで子どもがわかってないと描けない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年7月12日 (木)

メリンコミニスタの奥義炸裂―「ピューと吹く!ジャガー 13巻」

 革命が安定政権になると時が経つのは早くなるもので、いつの間にやらもう13巻となった定番ギャグマンガ。

ピューと吹くジャガー 13 (13) (ジャンプコミックス) ピューと吹くジャガー 13 (13) (ジャンプコミックス)

著者:うすた 京介
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 ギャグマンガといってもいろいろあるけど、既存の笑いに「新しいこと」を持ち込めるのは「変人」だけだと思う。天才と言ってもいいけど。私の目には、吉田戦車とうすた京介はとびきりの「変人」に映ります(笑)。

 この人たちがいてくれたおかげで、生活は精神的に豊かになったとさえ思う。ブームが続くお笑い芸人のネタから、一般の日常会話にいたるまで、彼らの作ったギャグの文法は幅広く応用できるし、実際されていると感じる。ていうか自分も使ってる。

 この巻の個人的ベスト3はこんな感じ。

◆ 267笛「“しらける”という意味の最高の言葉」

 ハマーの満面の笑顔と“ハイしけ”な顔。こんなに長い連載で、まだ見たことないような表情が出てきた(笑)。

◆ 273笛「裏の世界のバレンタイン」

 ハマーとビューティが、このマンガ中、最高の組み合わせであることを再確認(笑)。

◆ 285笛「感動をありがとう」

 ハマー絡みばっかりか!(笑)いやでも、忍法「下半身in上半身」は、小学生でも出てこない発想ですよ(ほめてる)。

 ともかく、来年のお正月はまた無我野先生に、さ迷える大衆を鼓舞する素晴らしいエールを期待したいものであります。ハッピハピイエーイ!(笑)

[MEMO]------------------------------

*このマンガを読んでいてときどき感じるのは、うすた京介が内に秘めている純粋さ。宗教や自己啓発セミナー、怪しい開運術なんかは、普通ならタブーとして扱わない素材ですよ。作者自身は、それらを強烈に批判する純粋さを抱えてるんじゃないかと思う。

 でも、そういう素材をうまく料理して、気取らぬ笑いに持っていけるところに感心する。特に、素材に対し批判的であることをできるだけ臭わせない、「臭み消し」の腕が絶品だよなあ、と。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月30日 (土)

今月のベスト&リスト(2007年6月)

 2007年6月に読んだ本のベストはこんな感じだった。

 ベスト 【フィクション】   「死亡推定時刻」 朔立木

死亡推定時刻 (光文社文庫) 死亡推定時刻 (光文社文庫)

著者:朔立木
販売元:光文社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 犯罪捜査や取調べの描写は、ノンフィクションと言ってもいいくらいのリアルさ。決してメデタシメデタシで終わらないストーリーに、日本の司法制度の闇が映り込んでいる。いろいろな問題意識を植え付けてもらったという意味でも、今月のベスト。

 ベスト 【フィクション以外】   「ラッキーマン」 マイケル・J・フォックス

ラッキーマン (SB文庫) ラッキーマン (SB文庫)

著者:マイケル・J・フォックス
販売元:ソフトバンククリエイティブ
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 彼が最近テレビに出演した模様を見た。あの状態で強く生きる姿は、本当に尊い。そのバックボーンに何があるのかを、この本は教えてくれる。

 上記の作品も含めて、2007年6月の感想リストは以下の通り。

虐待は犯罪である―「子どものトラウマ」

みそは美味しいの?―「銭 5巻」

ゆけ、アライグマくん―「ぼのぼの 29巻」

納得いく答えは、誰の中にもない―「これから社会に出るきみへ」

幸も不幸も、見方しだい―「ラッキーマン」

パズルに堕ちない群像劇―「ラッシュライフ」

気になるのはふたりの関係(←それだけ?)―「のだめカンタービレ 18巻」

意欲はある。行動はない。そんなときもある―「行動分析学入門」

四原色の世界に思いをはせる―「眼が語る生物の進化」

すべてはメジャーに―「Number 681号 “PRIDE後”の世界」

才能がもたらす鬼気と苦悩―「児玉清、大崎善生対談」

ドラえもんの「心」は作れるか?―「脳とコンピュータはどう違うか」

未来人が目立つのはたいへん?―「JIN―仁 6巻」

誰もが突然「犯罪者」になる―「死亡推定時刻」

「一周目」の幸福―「もやしもん 5巻」

あなたも私も友人失格です―「友情を疑う」

楽しさの裏面には悲しさが―「裁判官の爆笑お言葉集」

貧乏神ならまだいいほう?―「憑神」

冷静と熱血のあいだ―「太陽の黙示録 15巻」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

冷静と熱血のあいだ―「太陽の黙示録 15巻」

 巨大地震によって真っ二つに引き裂かれた日本が、米中の干渉の中でいかに再生を果たすかを描く、政治アクション(?)マンガの15巻。

太陽の黙示録 vol.15 (15) (ビッグコミックス) 太陽の黙示録 vol.15 (15) (ビッグコミックス)

著者:かわぐち かいじ
販売元:小学館
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 今、かわぐちかいじはこれと「ジパング」の2本の連載をもっている。どちらも面白いけれど、私の中ではちょっと印象が異なる二作だ。それは題材の違いからくるのかとも思っていたのだが、やっぱり主人公のキャラクターの差が大きく影響してる気もしてきた。

 「ジパング」や、作者の代表作の「沈黙の艦隊」では、主人公ランクに格付けされるキャラクターは、「冷静なカリスマ」タイプ(ジパング・草加と沈黙の艦隊・海江田)と「熱血なリーダー」タイプ(ジパング・角松と沈黙の艦隊・深町)に分けられる。外見もタイプごとに似通っていて、かたや細面の二枚目、こなたエラのはった二・五枚目という感じだ。

 そんな違いにすぐ目が行くので、この2タイプをすべての面において対照的なキャラクターととらえがちになってしまう。が、そうではない。かわぐちかいじマンガの主人公格には、重要な共通点がある。

 それは、理詰めの計算に長けている、ということだ。

 おそらく作者自身がそういう人なのだろう。困難な局面で重要な決断を迫られるとき、彼らの頭には彼我の戦略シミュレーションが緻密にできあがっている。最終的に、クールな選択肢を選ぶかホットな選択肢を選ぶかはキャラによって異なるけれど、その判断の背景には、きちんとした計算がある。なので、白熱の艦隊戦や互いの思いを賭けた対話シーンで、どちらが優るのかと高度な駆け引きに手に汗握ることができる。

 で、「太陽の黙示録」。この話の主人公・舷一郎は、どっちのタイプでもない。そして理詰めの計算もしない。人の気持ちがわかり、聡明な男なのだが、だいたいの局面にほとんど無策でのぞむ。本当なら、今まで何度殺されててもおかしくなかった(笑)。それでも生き残ってきたのはなぜかといえば、舷一郎クンの澄んだ心と情熱に、相手が勝手に平伏してきたから。

 マンガで盛り上がる場面のひとつは、「うわー、こんな難儀な状況をどう切り抜けるの??」というものだろう。そういうとき「ジパング」とかなら、「理」で優劣が決まり「情」がスパイスjになって感動を呼ぶ。ところが「太陽の黙示録」では、「情」で話が解決して「理」があとから付け足されたりされなかったり。

 まあ、事前に計算をめぐらしてる舷一郎なんてイメージに合わないので、彼は彼のままでいてくれていいのだが。ただ今回の15巻で、復興委員会の面々がどんどん舷一郎くんの味方になってくれるあたりがどうも調子良すぎるような気がして、こんな感想になりました(笑)。

[MEMO]------------------------------

*生きてるあいだに読んでおきたい、「沈黙の艦隊」。このあいだ懐かしくなって愛蔵版を買ってみたら、寝食忘れて読み通してしまった。やっぱりすごいです。「ジパング」も「太陽の黙示録」もいいけど、コレはほんとうに奇跡

沈黙の艦隊 (1) 沈黙の艦隊 (1)

著者:かわぐち かいじ
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月26日 (火)

「一周目」の幸福―「もやしもん 5巻」

 農業大学生の生態から、目に見えぬ菌たちの生態までリアルに描いちゃう、今が旬の農大マンガ、5巻。相変わらず絶好調。

もやしもん 5―TALES OF AGRICULTURE (5) (イブニングKC) もやしもん 5―TALES OF AGRICULTURE (5) (イブニングKC)

著者:石川 雅之
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この巻ではとくに、収穫祭からフランス行きにつなげる手際の良さに感服。大学自治の名のもとに行われる奇祭(笑)をつぶさに描いて楽しませるだけかと思いきや、ひそかにフランス行きのための資金稼ぎという伏線も張ってある重層構造だ。

及川「ねー、一人ぐらいフランスに送り込めるかな」

とか、

美里「はー、無駄な収穫祭やったなァ」

川浜「全くだ。迷惑な女王様だよ」

とか、実にシブい。登場人物もシブいし、この見せ方ができる作者もまた。

 ときおり炸裂するウンチクも、この作品の楽しみのひとつ。樹教授や菌たちはもちろん、川浜や及川まで語る語る語る。及川のコンビニでのウンチクなんか、作劇上は不自然にも感じられるのだけど(笑)。きっと、作者自身が「樹教授な人」なんだろう。自分の持っている知識を、語りたくてしょうがないっていうタイプの。

 周りにも同じ感じの人がいるので、その気持ちよくわかります(笑)。こちらも楽しく勉強させてもらってるのでまったくオーケー。

 あとこのマンガは、「二周目以降」が大事だと思う。農大の奇習をひとわたり見たら、主人公だけでなく読者も「新入生」ではなくなり、目新しさが薄れる。そこからどう次の展開に持っていくのかがちょっと難しい。でもきっとこの作者は大丈夫だとは思うので、「二周目以降」もお手並み拝見といった気持ちで楽しみにしているのだけど。

[MEMO]------------------------------

*蛍のゴス女装についてはちょっと感じてることもあるのだが、その辺りはいずれ今後の感想で。ひでー、だしおしみだー(P184)(…って、出し惜しむほどのことじゃないんだけど(笑))

*極私的ヒット。

「ママー見てー、浦安方面で見るアレのようだよ」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月24日 (日)

未来人が目立つのはたいへん?―「JIN―仁 6巻」

 幕末にタイムスリップした外科医が、歴史上の偉人たちと出会いながら、現代医学の知識と技術を生かして活躍する医学ロマンの6巻。いま購入を最も楽しみにしてるマンガのひとつ。

JIN―仁 (第6巻) JIN―仁 (第6巻)

著者:村上 もとか,酒井 シヅ,富田 泰彦,大庭 邦彦
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この巻では、ラストで主人公・南方が不当な罪に問われ牢に入れられる。次巻の展開が気になり過ぎるので、早いとこ出してくださいませ。

 この作品でいつも思うのは、「自分が100年以上も前の時代に飛ばされたら、どうなるか」ってことだ。南方のように主に理系の知識・技術があれば、身ひとつでタイムスリップしても活躍できるかもしれない。しかし、文系に偏ってる人間はキツいよね。思いつくのは、歴史的な知識でもって天災や事件でも予言してみせることくらい。ちょうど、かわぐちかいじ「ジパング」で太平洋戦争史に異様に詳しい乗組員がいて役に立ってる、あんな感じ。

 けど、あれだって、周りがみな現代人だから信じてもらえるわけで。しかも、100年以上も前になると、そもそも自分の知ってる「歴史」ってのが、果たして本当に正しいものなのか(それとも後世の推測なのか)、自分でも定かではなくなるからなあ。タイムスリップ先の人が信じてくれるくらいの説得力で語るのは無理なんじゃないか。

 そう考えると、いまこの世の中にも、「目立てない未来人」が人知れず埋もれてる、ってこともあるかもしれない(笑)。

[MEMO]------------------------------

*競馬のG1で、2003年6月にダービー → 安田記念 → 宝塚記念と単勝コロガシ(最初に50万円賭けて2.6倍の130万円 → それをすべて賭けて9.4倍の1222万円 → それをすべて賭けて16.3倍の約2億円)で儲けた人がいたと話題になった(経過の真偽は不明。2億円ゲットした人がいたのは事実)。この手の知識は、タイムスリップしたとき役に立つよね(笑)

JIN―仁 (第6巻) JIN―仁 (第6巻)

著者:村上 もとか,酒井 シヅ,富田 泰彦,大庭 邦彦
販売元:集英社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ジパング 29 (29) ジパング 29 (29)

著者:かわぐち かいじ
販売元:講談社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年6月18日 (月)

気になるのはふたりの関係(←それだけ?)―「のだめカンタービレ 18巻」

 夏らしいさわやかな表紙。出たのは6月だけど。しかしこの巻の見所は、さわやかと真逆で、千秋とのだめが「あと一歩」のところまで行った!ということだ(笑)。もしくは、そんな描写があった、ということ。

 

のだめカンタービレ #18 (18) のだめカンタービレ #18 (18)

著者:二ノ宮 知子
販売元:講談社
発売日:2007/06/13
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 今まで、登場人物の年齢のわりにそうした描写は避けられてきてたので、とても新鮮だった。このトシでそういうことがなさすぎると不自然なので、このあたりで描いてきたのは納得のタイミング。そしてその処理の仕方がまたウマイ。

 見つめあうふたり。のだめの瞳が濡れ、千秋のほほが染まり…。という流れでページをめくるとショパンの演奏シーン。思わず脱力する(笑)。この盛り上げとスカしの演出はほんと天才的。

のだめカンタービレ #18 (18) のだめカンタービレ #18 (18)

著者:二ノ宮 知子
販売元:講談社
発売日:2007/06/13
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月12日 (火)

ゆけ、アライグマくん―「ぼのぼの 29巻」

 革命から定番へ。安定して面白い動物4コママンガの29巻。

ぼのぼの 29 (29) ぼのぼの 29 (29)

著者:いがらし みきお
販売元:竹書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 ずっと買ってきた作品だが、正直、前の巻は買ってなかった。「もう、新しいことは起こらないだろう」と思って。ストーリーマンガは「ご飯」みたいなもんで、おかずにバリエーションがあれば食べ続けられるけど、ギャグマンガは「お菓子」で、ずっと同じ味だとどこかで飽きが来る。

 それがこの巻、「アライグマくんは旅に出た…」の帯と、彼が涙をこらえる裏表紙。ここでそんな大ネタか!(笑)もう買わざるを得ない。

 読んでみるとやっぱり面白くて、しみじみ好きな世界だった。ただ、最初の頃のテイストももう一度味わえないかなあと郷愁にひたってしまう。いまは、アライグマくんだけでなく、シマリスくんや、果てはぼのぼのまでが「ツッコミ」を入れるスタイルだけど、むかしは全員ボケっぱなしの投げっぱなしで、それが強烈に面白かったのだ。

 また最初のほうを読み返してみよう。あと、次の巻もやっぱり買おう。

 ゆけ、アライグマくん ― 。

 でも無事で帰ってきてね。

ぼのぼの 29 (29) ぼのぼの 29 (29)

著者:いがらし みきお
販売元:竹書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

ぼのぼの 1 (1) ぼのぼの 1 (1)

著者:いがらし みきお
販売元:竹書房
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年6月10日 (日)

みそは美味しいの?―「銭 5巻」

 声優プロダクション社長逮捕で時ならぬ注目を一瞬集めた、各種業界金銭事情マンガの5巻。

銭 5巻 (5) 銭 5巻 (5)

著者:鈴木 みそ
販売元:エンターブレイン
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 この巻の内容は、骨董の値段、アキバでのメイドカフェの開業、H雑誌の編集。われわれの知らない舞台裏で、ときに法外なお金がやり取りされているのが垣間見られる。月並みな表現だけど、面白くてタメになるマンガ。

 ただ、鈴木みそって、いわゆる「いいひと」ではないよね。もちろん「わるいひと」ではないのだけど、善とか英雄的行動とか無私の愛とか、いわゆる「いいこと」に感情移入できるタイプではなさそう。これの礼賛は今どき少年マンガでも無条件にはやらないけど、ストーリーマンガであればこの「いいこと」スパイスがいくらか入ってないと座りが悪いのは確か。鈴木みそは、「俺はあんまり美味しいと思わないけど客がいいと言うからこのスパイス使ってる」って感じじゃないか。

 骨董編のラスト、兄弟愛でシメるあたりに、どうもそんな作者の無理を感じる。自分が美味しいと思うものだけ出してくれれば十分なんだけどなあ。それはおそらく鈴木みそにとっては、カネを生む世の中のシステムと、それを取り巻く人間の負の感情だろうから、あまりに徹底されたら殺伐として読むのがツラくなるけども(笑)。

銭 5巻 (5) 銭 5巻 (5)

著者:鈴木 みそ
販売元:エンターブレイン
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)