あほな…の連発必至―「輸入食品の真実」
むかし、週刊金曜日の「買ってはいけない」をめぐって正しいの正しくないのと大騒ぎが繰り広げられたのを見てるので、私は基本的にこうした告発本は「構えて読む」ことを心がけてる。
だが、AERAの特集だけでなく、週刊朝日やら婦人公論やら、各所で輸入食品(とくに中国産)の危険性が報じられているものの、反論は今のところ目にしない。
やっぱり危険なのか?どのくらい危険なのか?
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食品のカラクリ6 輸入食品の真実!! (別冊宝島 1458) 著者:小倉正行 |
輸入食品に対するそんな疑問にわかりやすく答えてくれるのがこの本だ。農産物、水産物から加工品にいたる様々な食品に関して、輸入事情と、危険物質をめぐる事件、さらに検査体制が紹介されている。たまたま書店で見かけて買ったのだが掘り出し物だった。
本書で発せられる警告は主に3つある。輸入食品の検査体制の不備と、原料原産地表示の不徹底、そして食料自給率の低さである。とりわけ、輸入食品検査のずさんな実態はたいへん驚きで、勉強になった。
なんといっても、輸入食品に対する検査率が極端に低いことが衝撃的。2005年は、輸入届け出件数のうち、わずか10.2%しか検査されておらず、残り90%近くは無検査で流通しているという。
しかも、国が主体となって行う検査(行政検査)のやり方がすごい。輸入された食品からサンプルをとった後、残りが市場に流れるのは一切止めずに、並行して検査をやるのだ(モニタリング検査という)。だから、その検査で危険物質が出てきても、すでに誰かが買って口にしてるということになる。
あ、あほな…。きっと、トンデモない物質が検出されたけど、もう食べちゃった人に説明できないから、責任逃れで闇に葬られた検査結果とかあるんだろうなあ…(←懐疑主義)。
こういう穴だらけの検査体制が原因で、最近また流行りつつあるO157による食中毒なんかも起きている。2001年に210名近くが感染した食中毒事件では、厚労省がひき肉についてしか検査しておらず、それ以外の輸入牛肉に潜んでいたO157が原因になったとみられる。(さらに、この後汚染された牛肉を摘発してからの厚労省の対応は、怒りを通り越して笑えるくらいヒドいので、ぜひ77ページをご覧ください)
また、細菌よりさらに小さいウィルスに関しては、なんとびっくり、ノーチェックなのだそうだ。昨年猛威をふるったノロウィルスは、カキやはまぐりといった二枚貝に蓄積されることが多い。2001年に行われた研究によれば、中国、韓国、北朝鮮産の二枚貝81件のうち、12件からノロウィルスが検出されたという。道理で…(むかしカキを食べた夜に死にかけたことがある)。
ウィルスは種類が多いから検査が難しいのか?それにしてもノロウィルスだけでも検査したらいいのに…と思う。ところが、ここで紹介される厚労省の担当者の言葉がまたすさまじい。もしノロウィルス検査を実施したら、輸入魚介類がほとんどすべて輸入できなくなるとの危惧がある、と。つまり、安全よりもまず輸入、ということよね。あ、あほな…(本日二度目)。
輸入食品の検査体制は、残留農薬についてポジティブ・リスト制を導入し、一律基準で厳しく違反を網にかけるなど、進展している面もあるようだ。だが総じて、国民の「食の安全」を守るというより、輸入業者や食品会社といった「業界の利益」を守ろうという態度が透けて見えてしまう。
なんといっても、国の輸入食品の検査を実際に行う食品衛生監視員は、2007年現在で全国に332人しかいないというのだ。これでも、1990年の99人からだいぶ増えてはいるが、輸入量がそれ以上に激増しているので、こんな人手不足じゃまったく追いつかないということだろう。
この本では、監視員を3000人体制にすれば、検査率を7割まで引き上げられるとしている。今の10倍じゃん、この公務員削減のご時世に…とか思うが、しかし、これにかかる費用は年間300億程度だと。じゃあやろう。社保庁の莫大なムダを削ってこっちに持ってこよう!(笑)
つくづく、国のため社会のためと言いながら、その実自分たちの周りのせまいせまいエリアの利益を優先して、そのためには国民をないがしろにしても構わない、という体質だよね。いい加減、こっちのモラルも吹っ飛ぶわー。身捨つるほどの祖国はありや、ですよホント。
[MEMO]------------------------------
*まあしかし、BSE問題もしっかり片付いてないうちから牛肉輸入の全面的再開をアメリカが要求してきたり、そんなアメリカが危険性のある中国製品を輸入禁止にしたら中国がアメリカ産の輸入品を規制して反撃したり、国際関係の中で食の安全を確保しようとしても一筋縄ではいかないところがあるよなあ。
結局これが、日本の食料自給率の低さから生まれる悲哀なんだよなあ。他国の機嫌をなるべく損ねないように、顔色をうかがいながらの事後処理に終始するという。
*ただ、輸入偏重の食糧事情の背景は現代の「飽食」にあるとか言われるけど、色々な食べ物を巧みに取り込み同化させる日本食の文化としての性質上、世界各地の食材を輸入することは否定されるべきではないと思う。
問題は、安さこそ正義という感覚に下支えされた、「安価な飽食」がはびこっていることだろう。自分自身にもこれはあるからあまり大きなことは言えないけど、消費者がこの感覚を少しでも減らせば、とにかく安い外国産物を輸入しようという動きも減るはず。明らかに割高なコンビニが隆盛するわけだから、安さ以外の正義が認められる可能性だってあると思う。加えて原料原産地表示を徹底したら、日本の農業が広く儲かる時代が再びやっては来ないだろうか。
二ノ宮知子「GREEN」とか、星里もちる「本気のしるし」とかには、「都市部から農への流れ」の可能性が描かれている。もっと農業を儲かるものにして、都会でくすぶってる若者に政策としてそういう道を示せないか、とか夢想するんだけど。
| GREEN―農家のヨメになりたい (1) 著者:二ノ宮 知子 |
| 本気のしるし (2) (ビッグコミックス) 著者:星里 もちる |
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