グルメ・クッキング

2007年8月 8日 (水)

あほな…の連発必至―「輸入食品の真実」

 むかし、週刊金曜日の「買ってはいけない」をめぐって正しいの正しくないのと大騒ぎが繰り広げられたのを見てるので、私は基本的にこうした告発本は「構えて読む」ことを心がけてる。

 だが、AERAの特集だけでなく、週刊朝日やら婦人公論やら、各所で輸入食品(とくに中国産)の危険性が報じられているものの、反論は今のところ目にしない。

 やっぱり危険なのか?どのくらい危険なのか?

食品のカラクリ6 輸入食品の真実!! (別冊宝島 1458) 食品のカラクリ6 輸入食品の真実!! (別冊宝島 1458)

著者:小倉正行
販売元:宝島社
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 輸入食品に対するそんな疑問にわかりやすく答えてくれるのがこの本だ。農産物、水産物から加工品にいたる様々な食品に関して、輸入事情と、危険物質をめぐる事件、さらに検査体制が紹介されている。たまたま書店で見かけて買ったのだが掘り出し物だった

 本書で発せられる警告は主に3つある。輸入食品の検査体制の不備と、原料原産地表示の不徹底、そして食料自給率の低さである。とりわけ、輸入食品検査のずさんな実態はたいへん驚きで、勉強になった。

 なんといっても、輸入食品に対する検査率が極端に低いことが衝撃的。2005年は、輸入届け出件数のうち、わずか10.2%しか検査されておらず、残り90%近くは無検査で流通しているという。

 しかも、国が主体となって行う検査(行政検査)のやり方がすごい。輸入された食品からサンプルをとった後、残りが市場に流れるのは一切止めずに、並行して検査をやるのだ(モニタリング検査という)。だから、その検査で危険物質が出てきても、すでに誰かが買って口にしてるということになる。

 あ、あほな…。きっと、トンデモない物質が検出されたけど、もう食べちゃった人に説明できないから、責任逃れで闇に葬られた検査結果とかあるんだろうなあ…(←懐疑主義)。

 こういう穴だらけの検査体制が原因で、最近また流行りつつあるO157による食中毒なんかも起きている。2001年に210名近くが感染した食中毒事件では、厚労省がひき肉についてしか検査しておらず、それ以外の輸入牛肉に潜んでいたO157が原因になったとみられる。(さらに、この後汚染された牛肉を摘発してからの厚労省の対応は、怒りを通り越して笑えるくらいヒドいので、ぜひ77ページをご覧ください)

 また、細菌よりさらに小さいウィルスに関しては、なんとびっくり、ノーチェックなのだそうだ。昨年猛威をふるったノロウィルスは、カキやはまぐりといった二枚貝に蓄積されることが多い。2001年に行われた研究によれば、中国、韓国、北朝鮮産の二枚貝81件のうち、12件からノロウィルスが検出されたという。道理で…(むかしカキを食べた夜に死にかけたことがある)。

 ウィルスは種類が多いから検査が難しいのか?それにしてもノロウィルスだけでも検査したらいいのに…と思う。ところが、ここで紹介される厚労省の担当者の言葉がまたすさまじい。もしノロウィルス検査を実施したら、輸入魚介類がほとんどすべて輸入できなくなるとの危惧がある、と。つまり、安全よりもまず輸入、ということよね。あ、あほな…(本日二度目)。

 輸入食品の検査体制は、残留農薬についてポジティブ・リスト制を導入し、一律基準で厳しく違反を網にかけるなど、進展している面もあるようだ。だが総じて、国民の「食の安全」を守るというより、輸入業者や食品会社といった「業界の利益」を守ろうという態度が透けて見えてしまう。

 なんといっても、国の輸入食品の検査を実際に行う食品衛生監視員は、2007年現在で全国に332人しかいないというのだ。これでも、1990年の99人からだいぶ増えてはいるが、輸入量がそれ以上に激増しているので、こんな人手不足じゃまったく追いつかないということだろう。

 この本では、監視員を3000人体制にすれば、検査率を7割まで引き上げられるとしている。今の10倍じゃん、この公務員削減のご時世に…とか思うが、しかし、これにかかる費用は年間300億程度だと。じゃあやろう。社保庁の莫大なムダを削ってこっちに持ってこよう!(笑)

 つくづく、国のため社会のためと言いながら、その実自分たちの周りのせまいせまいエリアの利益を優先して、そのためには国民をないがしろにしても構わない、という体質だよね。いい加減、こっちのモラルも吹っ飛ぶわー身捨つるほどの祖国はありや、ですよホント。

[MEMO]------------------------------

*まあしかし、BSE問題もしっかり片付いてないうちから牛肉輸入の全面的再開をアメリカが要求してきたり、そんなアメリカが危険性のある中国製品を輸入禁止にしたら中国がアメリカ産の輸入品を規制して反撃したり、国際関係の中で食の安全を確保しようとしても一筋縄ではいかないところがあるよなあ。

 結局これが、日本の食料自給率の低さから生まれる悲哀なんだよなあ。他国の機嫌をなるべく損ねないように、顔色をうかがいながらの事後処理に終始するという。

*ただ、輸入偏重の食糧事情の背景は現代の「飽食」にあるとか言われるけど、色々な食べ物を巧みに取り込み同化させる日本食の文化としての性質上、世界各地の食材を輸入することは否定されるべきではないと思う。

 問題は、安さこそ正義という感覚に下支えされた、「安価な飽食」がはびこっていることだろう。自分自身にもこれはあるからあまり大きなことは言えないけど、消費者がこの感覚を少しでも減らせば、とにかく安い外国産物を輸入しようという動きも減るはず。明らかに割高なコンビニが隆盛するわけだから、安さ以外の正義が認められる可能性だってあると思う。加えて原料原産地表示を徹底したら、日本の農業が広く儲かる時代が再びやっては来ないだろうか。

 二ノ宮知子「GREEN」とか、星里もちる「本気のしるし」とかには、「都市部から農への流れ」の可能性が描かれている。もっと農業を儲かるものにして、都会でくすぶってる若者に政策としてそういう道を示せないか、とか夢想するんだけど。

GREEN―農家のヨメになりたい (1) GREEN―農家のヨメになりたい (1)

著者:二ノ宮 知子
販売元:講談社
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本気のしるし (2) (ビッグコミックス) 本気のしるし (2) (ビッグコミックス)

著者:星里 もちる
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2007年7月25日 (水)

その化学物質を誰が止めるのか―「中国トンデモ食品大全」「中国食品『毒抜き』調理法」(AERA 2007年7月30日号)

 中国産の食品が危険なのは、もはや明らか。今号のAERAの特集「中国トンデモ食品大全」に取り上げられた食品加工の呆れた実態の数々に、今やいちいち驚くのもアホらしくなってる。

 たとえば中国では、発がん性のある着色料・スーダンが、カップ麺やら牛肉やら、挙げ句ケンタッキーフライドチキンの色を良くするために使われている。これは本来は、ワックスなどに使う工業用の着色料らしい。

 同じく発がん性物質のホルムアルデヒドが、ビールの濾過の過程で使用されている。青島ビールは、「大手各社は2、3年前からホルムアルデヒドを使っていない」と日本の取材に答えているそうだ。おいおいそれまでは使ってたのかよ…。

 ローヤルゼリーには、抗生物質のストレプトマイシンが投与されている。これは結核治療に使うような副作用のある物質だ。さらにすごいのは、日本の輸入業者がそれを使わないように要請した後のこと。今度はストレプトマイシンの代わりに、別の抗生物質・クロラムフェニコールが検出されるようになる。これは骨髄への悪影響が指摘されるもっと副作用の強い薬だ。

 これらの例を見てると、ミートホープの件がイキがってる不良高校生レベルの悪事に思えてくるから不思議だ(笑)。

 有害な物質が食べ物に混入することの最大の恐怖は、その摂取を自覚できないということだ。即座に気分が悪くなったりするなら別だが、たいていの物質は体内で少しずつ蓄積して健康を害していく。

 だから、そういう危険性のある物質は、体に入る前のどこかの時点で、「やばいかどうかわからないけどとにかく止める」ことが必要だ。

 でも問題は、「誰がどうやって止めるの?」ってこと。

 中国から日本にやって来る食品に関して、生産者から消費者までのルートを見渡して、法制度で止められそうなポイントが、一個もない。

 中国の食品関係の法制度なんかまったくの未整備状態で、はじめから期待できない。日本の法が及ぶ範囲で、税関、輸入業者、流通、小売のどっかにフィルターをかけて…とか考えても、個別の食品に入ってる化学物質を完全に調べ続けることなんて、現実的に不可能だろう。(中国産ウナギに対し、抗菌剤・マラカイトグリーンが含まれないよう国内の検査体制を厳格化したのに、その後スーパーで売られていたウナギからこの薬剤が検出されたのがいい例だ)

 だとすると、止めるのは結局消費者自身、てことになる。今号のAERAは、続く特集「中国食品『毒抜き』調理法」で、食品の「解毒」の方法についてまとめてくれている。

 詳細は実際に読まれることをおすすめするが、とりあえず野菜はしっかり洗い、素材を加熱することを心がけようと思った。タマネギ、わさび、ビタミンCなどの解毒効果にも期待だ。あと、今日の昼に食べたバナナは、早速頭の部分を捨てた(笑)。

[MEMO]------------------------------

*本質的には、日本産の食品でも、生産者・企業が悪さをしてるっていう可能性は存在する。ただ、法の網が粗くても、各人のモラルが悪事を規制してる部分が、ある程度日本にはあったと思う(ムシのいい思い込みかもしれないけど)。

 だが、(ひと括りにするのは適切ではないだろうが)中国はそうしたモラルに欠ける。本当はそんな相手から仕入れをしなきゃいいのだが、日本も日本で安さ優先・利益優先によるモラルハザードが起き、「危険物」をどんどん招き入れるようになってしまった。

 それでも金持ちはオーガニックで安全なものばかり食べられるかもしれない。一般庶民にはそれはムリだ。つくづく「格差社会」だよなあ…。

*真保裕一「連鎖」は、食品輸入という珍しい題材を扱ったサスペンス。これを読んだときは、輸入や税関に潜む闇に対して、恐ろしさと憤りを感じたものだ。あれから10年以上経って、この現実。少なくともこの間、日本はぜんぜん良くなってないってことがよくわかる。

連鎖 (講談社文庫) 連鎖 (講談社文庫)

著者:真保 裕一
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